「eBASEBALL プロリーグ」2019シーズンの日本一となった「読売ジャイアンツ」の選手へ直撃インタビュー後編をお送りします。

前編ではチームの4番「舘野弘樹選手」と、日本シリーズ絶好調でチームを引っ張った「高川 健選手」の2名に話を伺いましたが、後編ではスプラトゥーンとパワプロの両タイトルで目覚ましい活躍をみせる「吉田友樹選手」、球団職員としての肩書も持つ「坂東秀憲選手」の2名にお話を伺うことができました。ぜひ、前編と併せてご覧ください。

【前編リンク】

ついにスプラとパワプロの2冠王に!「吉田友樹(たいじ)選手」インタビュー

――日本一おめでとうございます。昨シーズンの3人で日本一を決めたというのが感慨深いですね。

吉田選手:確かに。全然気にしてなかったです(笑)。

――そこは気にしてください(笑)。では改めて、今シーズン全体を含めての話なのですが、率直にかなり苦戦されたように感じました。

吉田選手::そうですね。全体のレベルが上がって、慣れてきた選手もいますし。まあボチボチという感じです。

――吉田選手も昨シーズンより、試合後に相手選手の強さを話されることが増えたようにも思えます。

吉田選手::ありますね。昨シーズンよりも全然レベルが違って、素直にうまいなと思いました。

――対戦相手で言いますと、昨シーズンを0勝5敗で終えられた選手に苦戦されたことが印象的でした。

吉田選手::高田和博選手(楽天ゴールデンイーグルス代表選手)はピッチングがうまかったので、仕方ないかなと思います。辻 恭平選手(阪神タイガース代表選手)のときは僕の調子が悪かったので、他の2人が2勝してくれたし「まあいいか」って。正直、今シーズンは5イニング制なので負けるときは負けるんで、あまり気にしてないです。

――吉田選手の成績で気になるところがありまして、昨シーズンと比べて得点圏打率が落ちています。なにか体感的に違いはありますか。

吉田選手::単純にジャイアンツは、チャンスに強い選手が少ないんですよ。とくに亀井善行選手は、チャンスでだいぶ能力が落ちてしまうので。特別意識はしてなかったですけど、能力的に打率が落ちても仕方ないのかなと思います。

――確かに得点圏打率の低下の一方で、吉田選手は打点でセ・リーグ5位の成績でした。

吉田選手::昨シーズンより確実に僕のレベルは上がったんで、いい感じに打てたといえば打てました。

――あとは印象面の話なのですが、今シーズンはバッティング好調の日とピッチング好調の日がはっきりと分かれたように映りました。

吉田選手::なんですかね……なんかナイスピッチが出ないなというときがあったり、全然バッティングが合わないなというときがありましたね。

――その好不調の原因のひとつかもしれませんが、シーズンも長期化しました。こういったスパンでの試合は、吉田選手も経験していないですよね。

吉田選手::ないですね。いやー長かったです。

――今シーズンは特に、最初から大掛かりな親知らずの手術などによる体調不良もありましたしね。

吉田選手:そうですね。パワプロの練習だけでなく、スプラの練習もしてって感じだったので。
※吉田選手はスプラプレイヤーとしても活躍されている

――そんな長いシーズンの中で、仲間の存在は頼もしかったのではないでしょうか。

吉田選手::みんなそれぞれ見せ場があって、それぞれ活躍したのがいいなと思います。

――高川選手を励ます吉田選手の姿は、とくに印象的でした。

吉田選手::高川選手は今シーズンはマジでやばかった(笑)。でも、最後の最後でちゃんと打ってくれたので。

――戦った相手である下山祐躍選手(千葉ロッテマリーンズ代表選手)の印象について伺いたいと思います。

吉田選手::強かったですね。ピッチングがやっぱりうまかったです。

――同点に追いつかれたシーンで伺いたいことがあるのですが、7回からの回跨ぎで畠世周選手を続投させた場面、澤村拓一選手への継投は考えませんでしたか。

吉田選手::能力的にそこまで差がないですし、今シーズンはカットボールがミート打ちに刺さりやすいので、ミート打ちのうまい下山選手の対策として続投させました。結果的に打たれてしまいましたけど、内容的には打ち損じのような当たりがセンター前に行ってしまった感じなので。

――来シーズンの「eBASEBALL プロリーグ」への参加についてお話いただけますか。

吉田選手::まだ未定ですね。来シーズンも継続契約があるかも知らされていないですし。ただ、ジャイアンツ以外だったらやらないです(笑)。

――その言葉が聞きたかったところがあります(笑)。

吉田選手::ジャイアンツでいけるのであれば(笑)。日本一連覇を目指して来シーズンもがんばりたいです。

――今シーズンはとくにレジェンドOBで松井秀喜さんを起用できるなど、吉田選手としてもやりがいがありましたよね。

吉田選手::松井さんは大好きだったので嬉しかったですね。単純に好きなチームでやりたいから、ジャイアンツ以外は考えられないです。

東大卒・球団職員のルーキーは日本一のクローザーになった「坂東秀憲(どぅーけん)選手」インタビュー

――最後のインタビューは、チーム最年少の坂東選手となりました。

坂東選手:確かに。最年少かぁ。

――「eBASEBALL プロリーグ」全体でみれば中堅層ですけどね。

坂東選手:おっさんですよ、本当に。一昨日で26才になりました。

――おめでとうございます! 日本一という、最高の誕生日プレゼントを自分に贈れましたね。

坂東選手:本当によかったぁ。これで誕生日プレゼントも買えますね(笑)。

――4人の中で一番疲労感がにじみ出ていますね。

坂東選手:疲れましたよ。体がしんどいです。

――その疲労の要因というのは、間違いなくポストシーズンで全試合3番手……クローザーの役割を果たされたことにあると思います。これはチームメンバーから頼まれてのことだったのでしょうか。

坂東選手:頼まれてというか、他のチームメンバーのことを考えたときに「僕が3番手をやることが一番いいんじゃないかな」と考えていました。舘野選手もピッチングがうまいですけど序盤中盤でノビノビ打ってもらった方がいいので、僕が最適かなと思って。このポストシーズンは、すごく鍛えられたなと思います。

――昨シーズンからポストシーズンは1選手3イニング担当のリレー方式(1試合9イニング制)で行われており、これを経験した選手は口を揃えて「入り方が難しい」と話されます。これについてはいかがでしたか。

坂東選手:僕はそこまで難しいとは感じなかったですね。ただ、自分のなかでは苦しさはなかったですが、他のチームの3番手でプレイしている選手を見るのがしんどかったです。「苦しそうにやってるな」って。吉田選手もコカ・コーラ eクライマックスシリーズの中日ドラゴンズ戦と今日で、2回打たれてますし。追われる側のメンタルというか、やっぱり最後は難しいんだなと。

――シーズンを通した質問なのですが、ナイスピッチ率では吉田選手と坂東選手にほとんど差はありません。しかし防御率でいうと、2点も差がある。この差はどこから生まれるのでしょうか。

坂東選手:ひとつは、僕が広い球場でプレイすることが多かったことがあると思います。あとは配球ですかね。吉田選手は打たれていいところは思い切り攻めるピッチングをしていて、そこがプロだなと思います。僕の場合は吉田選手ほど点を取れないから、1点もあげないようにピッチングをしているんです。

――結果として、防御率の成績はセ・リーグ2位。開幕前の目標としていた最優秀防御率へ迫る活躍となりました。

坂東選手:大茂英寿選手(横浜DeNAベイスターズ代表選手)が断トツでしたけど、満足はできる結果になりました。ただやっぱり、シーズンを振り返ると「あの球打たれたな、あれは自分のなかで無かったな」ということがあるので、そういうところを反省して改善できれば、もっと良い選手になれる気がしています。

――今シーズンの出場試合は、2勝2敗1分という数字以上の存在感を、多くの人が感じていると思います。

坂東選手:観客の方が見ていてそこまで不安にならないプレイはできたと思いますね。とくにポストシーズンはほとんどリードした状態で回ってきたので「点差は何点ある」「相手の打順の巡りはこうだ」とか考えて、どこまでだったら打たれていいと考えることができました。

――冷静に分析されていたわけですね。

坂東選手:正直、コカ・コーラ eクライマックスシリーズで脇 直希選手(中日ドラゴンズ代表選手)にホームランを打たれた球も、自分のなかで納得しています。ナイスピッチの球を打たれると動揺する人もいると思うんですけど、点差が縮まっただけで、最終的にひっくり返されなきゃいいという考え方ができていました。今シーズンはチームのなかで「○○理論」という用語がたくさんできていて、実はこれもそのひとつなんです。

――4人ならではという感じですね(笑)。ぜひ教えてください。

坂東選手:例えば「ライマル(ライデル・マルティネス)理論」というのは、マルティネス選手さえ打てれば他の投手は全員打てるという考え方で、対戦球団がどこであれひたすらにマルティネス選手を打ちこむという理論。ほかには「(岡本)和真理論」というのがあって、一塁手は5イニング制なら打力に優れる阿部慎之助選手だけど、9イニング制なら守備を含めた総合力を優先して岡本選手を起用するというものです。

※中日ドラゴンズのマルティネス選手は、「ノビA、球速159km、球速安定」という、現在の環境で「人間が打てる球じゃない」といわれるほどの能力を持っている。

――クローザーの役割についても「○○理論」があったわけですね。

坂東選手:みんなには言っていないのですが、僕のなかだけで「カミネロ理論」がありました。カミネロ選手がジャイアンツに在籍していたとき、チームが勝てば自分が点を取られていても陽気に「OK、OK」という感じでベンチへ戻ってくるんですよ。投手って点を取られたら、試合に勝利していても多少は悔しそうに戻ってくるのが普通なんですけど。それを間近で見ていて、こういうメンタルがクローザーには大事なんだなと思って。

※アルキメデス・カミネロ:読売ジャイアンツ(2017-2018)に在籍していた投手。最速162kmの速球を武器に、2017年シーズンには29セーブを挙げるなどクローザーとして活躍した。

――まさに球団職員ならではのお話ですね。確かにファンの立場から見てもカミネロ選手はそんな印象でしたが、実際に現場でもそうだったんですね(笑)。

坂東選手:そうなんですよ。だから僕も、クローザーは「勝ち」を消さなければいいという気持ちでプレイできていたので、縮こまらないで投げられたのがポストシーズンの結果に繋がったのかなと思います。

――坂東選手は「93年世代」であり、実際に93年世代のジャイアンツの選手とは仲が良いとのことですが、良いご報告ができますね。

坂東選手:一昨日ジャイアンツ球場で仕事をしてるときに、少し選手とも話をしたんですよ。山本(泰寛)はとくに仲が良いんですけど、「もう少し守備頑張って」とか言ったり。(吉川)尚輝には「パワプロでは不動のセカンドで最強だから」と伝えたら「あまり横っ飛びさせないでくださいね」と言われたので、「ゲームのなかだから大丈夫」と(笑)。

※2019年の読売ジャイアンツでは、1993年世代の選手が一気にブレイクし「93年世代グッズ」が作れるほどの人気を集めた。今村信貴選手や石川慎吾選手、メルセデス選手など多くの選手が活躍した。

――以前にお話の中で出た「今シーズンが最初で最後の覚悟で挑戦する」という言葉が印象に残っていたのですが、2020シーズンの開催が決まった今、改めて来シーズンへの思いを聞かせていただけますか。

坂東選手:プロテストへ挑戦するときは、本当にそう思っていましたね。ただ、シーズンが進んで結果が出ていくなかで会社の上司や同僚からも応援されるようになり、会社としてもeスポーツへの関心がますます高まっているので、今は続けたいという気持ちです。

――来シーズンのeドラフト会議があるとしたら本命はスワローズですか(笑)?

坂東選手:いやいや(笑)。会社的には、今シーズンのドラフト会議も12球団OKではありましたけど。

※坂東選手は学生時代、スワローズファン。

――冗談はさておき、来シーズンへの思いを聞けて安心しました。

坂東選手:実際、結果が出ていなかったら、話は別だったと思います。日本一にある程度は貢献できたというのが大きいですね。来シーズンのルールがどうなるかはわかりませんが、仮にまたプロテストからとなったとしても、これだけの経験を積めば怖いものはありません。

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