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eBASEBALLのセ・パ格差はなぜ改善されたのか
2020年のプロ野球では、「セ・パ格差」が大きくクローズアップされた。
実は以前からeBASEBALLにおいても「セ・パ格差」は取り沙汰されており、2019シーズンのe交流戦ではセ・リーグ9勝に対し、パ・リーグ22勝(5引分)と大きく水をあけられていた。
『実況パワフルプロ野球』は、プロ野球のデータを反映する作品だ。本来であれば、今シーズンのeBASEBALLにおいても「セ・パ格差」の劇的な改善は望めないはずである。
しかし蓋を開けてみれば、今シーズンのe交流戦ではセ・リーグ14勝に対し、パ・リーグ16勝(6引分)とほぼ拮抗した。
今回は、eBASEBALLにおける「セ・パ格差」改善の要因はどこにあったのかを振り返ってみたい。
能力値の調整
「セ・パ格差」解消に最も影響を与えたのが、能力格差の調整だろう。
eBASEBALL開幕直前のアップデートで、パ・リーグのチームは下方修正、セ・リーグのチームは上方修正されたと感じたプレイヤーは多い。
象徴的な変更点を挙げると、全チームに「弾道4」持ちの選手、「悪球打ち」持ちの選手が所属するよう調整された。
※両能力ともに「対人戦で効果的」といわれている
実際、プロ野球において「悪球打ち」という印象を持たれている選手はそう多くないだろう。「弾道4」についても、プロ野球での活躍と一致しない選手に付与された例が見受けられる。これは意図的に、チーム間の格差を調整したと見るのが妥当だ。
環境変化とクラウンスタジアム
e交流戦は、全試合クラウンスタジアムで実施される。クラウンスタジアムは広く、ホームランが出にくい。ただでさえミート打ち環境である今シーズンにあって、e交流戦はよりミート打ち偏向になったといえるだろう。
これにより、強振主体のプレイヤーはもちろんのこと、ピッチングを武器とする守備型プレイヤーも苦戦を強いられたように感じる。
今シーズンは絶妙なコースに投げてきっても、ミート打ちでうまくヒットゾーンに運ばれるシーンが目につく。これをさせると、最小失点に抑えつつ、少ないチャンスをものにして勝利する守備型のスタイルは厳しくなる。
さらにいえば、高いナイスピッチ率は絶対的な武器と言い難くなってきている。全体的にナイスピッチ率が向上しているためだ。
象徴的な例を挙げると、2018シーズンセリーグ1位のナイスピッチ率が69.8%(ヒデナガトモ選手)だったのに対し、今シーズンは40名がナイスピッチ率60%以上を記録している(1/3現在)。
※2018シーズンの平均ナイスピッチ率は54%。今シーズンは1/3時点で約67%と、13%も向上している。
つまり、一昨年の最高水準に大半のプレイヤーが到達しているのだ。
ピッチングで差をつけにくいのであれば、勝敗を分けるのはバッティング技術。守備型のプレイヤーが苦戦するのは必定といえるだろう。
実際、昨シーズンに最優秀防御率のタイトルを手にした三輪選手(東北楽天ゴールデンイーグルス)、下山選手(千葉ロッテマリーンズ)、大茂選手(横浜DeNAベイスターズ)の戦績は芳しくない。
特定のプレイスタイルが苦戦を強いられる環境変化も、「セ・パ格差」解消になんらかの影響を与えているだろう。
プレイヤースキルの拮抗
実は以前から選手たちのあいだでは「パ・リーグに上手い人が集まっている」という認識があった。
実際に2019シーズンのプロリーグランキング上位15人を見ると、セ・リーグ6名・パ・リーグ9名と、ややパ・リーグの選手のほうがポイント的には優秀な傾向が見て取れる。
しかし、今シーズンのプロリーグランキング(1/3時点)の上位15人を見ると、セ・リーグ7名・パ・リーグ8名。プロリーグランキング上では、セ・パ間でのプレイヤースキルは拮抗している。
※プロリーグランキングのポイントは大味な試合をしたほうが加算されやすい傾向にあり、選手の技術を完全に表すわけではない点は言い添えておく。
これについても有力プレイヤーの引退やルーキーの台頭、全体的なプレイヤースキルの向上など様々な要因が考えられる。
ただいずれにせよ、セパ間のプレイヤースキルの差はほぼ埋められたといえるだろう。
影のまとめ役の献身 高川 健選手メールインタビュー
筆者は2018シーズンから「eBASEBALLプロリーグ」の読売ジャイアンツに密着し、選手たちの生の声をお届けしてきた。今シーズンは新型コロナウイルス感染拡大を鑑み、メールインタビューを実施。今回は高川 健選手へお話を伺った。
「ミート打ちが強化され、強振に弱点ができたバランス調整」の影響を強く受ける読売ジャイアンツ。人知れずチームを支えるのは、高川選手の献身だった。
ーー今シーズンは「ミート打ちが強化され、強振に弱点ができたバランス調整」によって、、ジャイアンツの面々はプレイスタイルの変化を余儀なくされています。
そもそも昨年の日本一で各チームから「ジャイアンツ包囲網」を張られていましたが、ゲームのシステム的にも包囲網を張られた状態ですね。
ーー高川選手も初戦こそかなり強振を使用していましたが、2戦目以降は大幅にミート打ちを増やされました。
第2節の阪神タイガースとのカードで、2敗1分と大敗したのが大きなきっかけです。特に森選手との試合でたいじさん(吉田選手)が燃やされて(2-8)、やっぱり今シーズンはミート打ち主体になるのかと改めて思わされて。その対策として、私とどぅーけんさん(坂東選手)は広い球場での試合に出場することが多いので、ミート打ちにシフトしたというところですね。
ーーやはり今シーズンは、「ミート打ち環境」ですか。
あと私がミート打ちをあえて多めに使うのは、ミート打ちが強すぎるのを見せることで「強振を強化してほしい」というメッセージも込めています。逆に言うと、この環境でも自分の信念を貫いている選手がいるところは注目してほしいですね。
ーーeBASEBALLでは1番に併殺持ちを起用するのがセオリーとなっており、ジャイアンツではウィーラー選手を1番に据えることが多い。しかし高川選手は、1番には丸選手を据えることが多いですね。
今シーズンの基本方針として、機動力をつかえる選手は早い打順に置こうと思っています。丸選手であれば長打一本で帰ってこれますが、ウィーラー選手でそれは厳しく、出塁したあとの選択肢も減ってしまいますから。
ーー高川選手の試合では、3番手・4番手級の投手を先発させるケースが目立ちます。
自分のなかでは、菅野選手は「勝ち運」を持っているので、強振メインで戦うてぃーのさん(舘野選手)とたいじさん(吉田選手)に起用してもらいたいという意図があります。
※勝ち運:投手の特殊能力。登板時、チーム全体でパワーが少し上昇する。
ーーその点で、「負け運」をもつ畠選手を先発させたのは驚きでした。
※負け運:投手の特殊能力。登板時、チーム全体でパワーが少し減少する。
うちのなかでは「畠負け運理論」と言ってまして(笑)。
ーー毎年恒例となっている、ジャイアンツの謎理論シリーズですね(笑)。
まあこれはパワーを下げることでミート打ちが刺さると、ふざけて言ってるだけで。真面目な話としては、今シーズンはミート打ちが基本なので、ホームランを打ちにくくなることへの抵抗はあまり感じないということですね。
ーー今シーズンは無観客での収録となっていますが、過去のシーズンと比較してやりやすさはありますか。
観客の方々だけでなく、対戦相手の声も届きにくい環境だったので、試合自体はやりやすいですね。声援に後押しされることもあれば、逆にプレッシャーになってしまうこともあり、良くも悪くも心を動かされてしまうわけです。平常心を保ったまま試合に入れるので、無観客試合はプラスの面も感じます。
ーー逆に無観客ならではのやりにくさは?
うちのチームでいうと、特にてぃーのさん(舘野選手)とたいじさん(吉田選手)は「気持ちが高ぶってこない」と感じているようです。過去2シーズンをプレイしてきて、「ステージへ上がって改めて気合が入る」という流れができていたので。ファンの方々の前でプレイできないのは残念ですね。
ーー改めて今シーズンは、どのような心持ちでプレイされてきましたか。
勝つことも重要ですけど、見てる人が楽しめる、自分が楽しくプレイできることを一番大切にしています。うちのキャプテン(舘野選手)も「勝つことを優先してたら、とっくにミート打ちをしている」と言っていますし。なによりもこんな大変な状況のなかで開催していただいただけで、個人としては満足なんです。