――3月1日に新体制となった「忍ism Gaming」についてお聞かせください。

チョコブランカ選手:チームの話なので、私も参加させていただきます。これまで「忍ism」という会社に「不動」と「花鳥風月」と言うチームが存在していたんですが、今後はすべてまとめて「忍ism Gaming」として活動することになりました。

3月1日に発表させていただいたんですが、ちょうど「忍ism」が3年目に入るという所で、体制を変えさせていただきました。これまでも動画配信はしていたんですけど、より一層、力を入れていきたいと思っています。

ももち選手:大会で活躍するだけでは、どうしても選手の人となりまではわからないので、選手のストーリーを知って貰えるようにしたいと思っています。そうすることで、今まで以上に熱量の高いファンが集まってくれるのではないかと考えています。試合では見せない顔とか、いわゆるオフショットやバックヤードを見せていきたいですね。

我々もドキュメンタリー番組などで裏側を見て貰っています。夫婦間のやりとりも包み隠さずに配信しています。ファンもそういった姿を見ているうちに、我々夫婦の距離感みたいなものがわかってくるわけです。

今となっては、「ももチョコ夫妻はすごくラブラブだよね」とか言われないわけです(笑)。良い距離感でお互いのやりたいことをやっているなって見られているかなと。ただ、見せすぎてもと言うのはありますね。大会でカッコイイももちが、崩れすぎてもダメじゃないですか。

チョコブランカ選手:自分で言うんだ(笑)。

ももち選手:言いますよ。自分で言います(笑)。そこの塩梅は大事ですね。決めるところと、面白いところはどちらもしっかりとできていないと。

――多くのesportsチームでは、選手部門とストリーマー部門の2本柱を立てていますが、忍ism Gamingもそのような形になるのでしょうか。

ももち選手:特に不動は結果がすべて。とにかく結果を出すことと言う状態だったんですけど、忍ism Gamingになってからはもう少しエンタメ寄りと言いますか、そういった方向にも力を入れていきます。もちろん、結果を疎かにして良いと言う判断ではなく、そちらにも注力していくと言う感じです。

チョコブランカ選手:大会に向き合う姿勢は今まで通りで、さらに動画配信も強化していくと言う感じです。両軸で行っていく感じですね。ストリーマー中心のエンタメ集団に向かっていくわけではないです。

ももち選手:なので、ストリーマー専門の人はいません。基本的には選手が配信を兼務します。ストリーマーとして活動を専業にする人を入れる感じではないですし、今まで選手だった人が引退してストリーマーに転向するわけでもありません。なので、部門と言う形はとりませんが、選手と配信でしっかりやっていこうと思っています。

現時点では「ストリートファイターV」の選手が多いですが、「大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL(スマブラ)」のあばだんご選手や「Splatoon2」のほのか選手、ハル選手のように、他のタイトルのゲームも取り扱っています。

また、あばだんご選手が対戦格闘ゲームの「グランブルーファンタジー ヴァーサス」に挑戦したり、「ストリートファイターV」勢が「スマブラ」をプレイしてみたり、特にこれって決まりはなくやっていきたいと思っています

――最近は対戦格闘ゲームでもコーチの存在が注目されはじめていますが、忍ism gamingではコーチの採用もあるのでしょうか。

ももち選手:若手のジョニィ選手、ひぐち(旧名ハク)選手、ヤマグチ選手の3人が忍ismに入った時は、弟子として募集をしていたんです。その時に弟子以外にコーチも募集していました。

コーチ志望の人も来ていて、取るか取らないかの状態までいったんですけど、結局その話は流れてしまいました。なので、コーチを採用することに関しては前向きに考えています。プロゲーマーのセカンドキャリア問題の解決策のひとつでもあるので、重要なことだと思います。

――esports選手に限らず、多くの人に愛され、知られるようになると、社会人や人としてのマナーや節度などが必要になってくると思いますが、若手の教育として、そういったことも教えているのでしょうか。

ももち選手:若手にはSNSの使い方やインタビューされたときの発言などについて教えています。他のタイトルのプロゲーマーがSNSで発言したことがきっかけで、契約が解除されたり、大会が中止になって多大なる損害を出してしまったり、そういう話は聞いているので、選手自身も気にしています。

ただ、どんなことが良くて、どんなことが悪いかって言うのがまだ判断できていないところがありますね。例えば、マンガの一コマを引用してしまうとか。引用の範疇になるかも知れないですけど、著作権的にはグレーというか、まあ、敢えてやる必要はないですよね。マナー違反とか、犯罪ぎりぎりラインの行動を自慢してしまうと言うのはよく見かけます。

「忍ism Gaming」の若手に対しては結構こうこうと説いていますし、彼らはすでに活躍をし始めており、注目されていることが自覚したことで、自重するようにはなりました。

チョコブランカ選手:私は昔、いろいろ言われたりするとすぐに反応してしまって、炎上もしました。そういう経験があるので、こういうことをすると、こう(私みたいに)なっちゃうよと言ってます(笑)。

ももち選手:有名になってくると、そこからは自重してくるんですけど、過去を掘り下げられてしまうことはありますね。それは怖いですね。オーナーとしては、そういうところはしっかりと見ていかないと行けないかなと思っています。弟子募集とかコーチ募集とかするときは、どういう人かなってSNSは確認します。

ガチガチにいろんなことを禁止したり、発言を止めても、個人の良さが失われてしまいますし、魅力も薄れてしまいます。ある程度のことは、実際にやらせてみて、失敗して学んでいって欲しいと思っています。そうでないと、インタビューとかでどのラインまで発言していいのかわからなくなって、下手をしたらラインを超えて発言してしまうわけです。

なので、多少ギリギリのラインを責めて、怒られたらこれ以上はダメだなって判断できるようになって欲しいですね。そうなることで、再起不能になってしまうような、発言や態度、行動に関しては自分で判断できるようになってくると思います。

現状では、ジョニィ選手、ひぐち選手、ヤマグチ選手の3人はプロ選手として活躍できていますが、そもそも育成選手、弟子はプロ選手を目指すためのものではありません。ゲームを通じて人として育成することが目的なんです。

弟子に採用するときに選手の親御さんともそのことについては話をしていますし、プロを育成する機関でないことは理解していただいています。なので、SNSの使い方だけでなく、すべての面において成長してもらえれば良いですね。

――忍ism Gamingへ入りたいと言う人は多いと思いますが、現在、選手の入団についてはどんな形をとっているのでしょうか。

ももち選手:弟子募集の時は、その名の通り募集をしました。花鳥風月とかの場合は、ほとんどスカウトですね。今後も基本的には選手を強化したいと思った時はスカウトで行くと思います。

ただ、スカウト以外で入れないかと言うとそう決めているわけではないので、入りたいとアピールしてくれば、それは考えます。その入りたいと言う気持ちが強く、熱量が高ければ、それ相応の対応はしたいと思います。あとは「忍ism Gaming」のカラーに合っているとか、一緒に頑張って行けそうな人が良いですね。

――ところで日本での大会が増えてきて、esports自体が盛り上がっていますが、長年esportsに携わる者として、現状をどうみているのでしょうか。

ももち選手:10年前とかと比べると賞金額は年々上がってきていますね。でも、ここ最近では落ち着いた感じがあります。プロとしては賞金が高い方が良いことなんですけど、そればっかりになってしまうと、賞金を稼げるような選手だけが大会に関わって、アマチュアや新規の人たちを置き去りになってしまうか心配です。

アップデートなどもプロの大会の時期に合わせたものになったり、大会で活躍したキャラクターの調整が入ったりと、プロシーンを中心に回ってしまうのは、ちょっと怖いなと思っています。コミュニティやファンあってのゲームだと思ってました。そこら辺は今は少し落ち着いた印象を受けています。

プロとしても賞金ばかり追いかけてしまうと、esports市場がしぼんでしまった時、もともとコミュニティにいた人たちがいなくなってしまうかも知れません。コミュニティからプロ選手になれた人は良いですが、そうではない人にとって、プロ選手しか活躍できなかったり、そもそも参加できないようになってしまうと、もういいかなって思ってしまうわけです。

賞金が出るようになってから、プロ制度ができてから入って来た人たちは、賞金が出なくなったら、じゃあ出ないってなるかも知れません。そうなった結果、誰もいなくなってしまうわけですよね。

チョコブランカ選手:私はプロ選手になる前から、コミュニティイベントや大会の運営をやってきましたが、その当時に比べればコミュニティ大会自体の数も減ってきているのかなって思います。それこそゲームセンターで頻繁に行われていた小規模な大会ができなくなってしまっています。

ももち選手:ゲームセンターの存在は大きいですね。日本のゲームシーンは、ひとつの側面としてアーケードを中心に回っていました。店舗レベルの小規模の大会が開催されたとして、その大会にプロ選手が出るかと言うと、それも難しく、ほとんどが出ないと思います。

昔は、そういうこと関係無く、フラッと参加している人は多かったですし、それこそ、こんな大会に「ウメハラが?」みたいなことは起こっていました。今はプロシーンができてしまったが故に下手にプロに価値ができてしまっています。

ゲームセンターでゲームをする、それが大会だとしても、それそのものに意味なんてなかったんですよ。出たいから出るだけでした。今は高額賞金があるとか、優勝することが栄誉だったり、価値や意味ができてしまったんですよね。

なので、昔ながらの意味や価値のない大会にはプロ選手は出にくくなってしまったんです。このこと自体は、良いことか悪いことかは一概には言えないと思います。ただ、コミュニティ出身の立場から言うと、以前より熱量は下がってきているのかなって思いますね。なんか良い落とし所があれば良いですね。

――チームとしての目標や目指す先はどんなものでしょうか。


チョコブランカ選手:多くのファンにチームを好きになってもらいたいですね。チーム作りとしては、esportsチームだと「MOBA」や「FPS」などのチームを参考にしています。「MOBA」や「FPS」はそもそもチーム戦なのでチームを応援する土壌があるのですが、対戦格闘ゲームだと、個々のファンが付いても、なかなかチームにファンになってくれる人は少ないんです。

ももち選手:サッカーや野球の場合って、選手が入れ替わってもチームを応援しつづけるじゃないですか。10年も経てば全員入れ替わっている可能性もありますし。そういう風に「忍ism Gaming」もチーム自体にファンが付くようにしていきたいですね。なので、チーム自体でイベントをしたり、グッズを作ったり、そういうことはやっていきたい。

――なるほど、対戦格闘ゲームもチーム戦を行うことがありますが、急場で作ったチームが多く、そもそも所属しているチーム同士の対抗戦と言うのはほとんどありません。そういったチーム自体にファンが付きにくい状況で、チームのファンを増やすための施策があるのでしょうか。

ももち選手:チョコが言ったことと同じですが、愛されるチーム作りですね。プロ選手が所属するチームなので、勝利することは重要ですが、勝利至上主義にはならず、ファンに喜んで貰うことをやっていきたいと思っています。自分たちが、プロゲーマーとは何かと言うことをもう一度考えて、新たなプロゲーマーの道を作っていきたいです。

忍ism公式サイト株式会社 忍ism(シノビズム) 我々は「ゲーム」と「人」を繋げます。

1 2