東京を拠点にアーティスト、インタラクションデザイナー、プログラマー、DJ、VJなど、様々なジャンルを横断する真鍋大度氏。

坂本龍一、野村萬斎、Perfume、サカナクション、Bjork、Squarepusherなど、国内外のアーティストを始め、デザイン、アート、エンターテイメントの領域において幅広いフィールドでコラボレーションを行う世界的なアーティストだ。
そんな真鍋氏が5月26日(日)に大阪で開催されるeスポーツPRフェス「GAME CENTERS IN OSAKA」で、「ストリートファイターV」(以下、「ストⅤ」)のエキシビジョンマッチに参戦する。
高校時代、「中目のダルシム」の異名を取るほど「ストリートファイターⅡ」(以下、「ストⅡ」)に入れ込んだ真鍋氏ではあるが、社会人になってからは格闘ゲームと縁遠くなってしまい、「ストⅤ」を始めたのも今回のイベントに合わせてのこと。
そこで力強い助っ人として真鍋氏をサポートするのは、格闘ゲームを中心にゲーム業界を盛り上げる活動を行う団体「TOPANGA」に所属するときど選手。「東大卒プロゲーマー」として世界を股にかけて活躍するときど選手が、世界最高峰の技を真鍋氏に伝授するのだ。
真鍋氏が対戦する相手は、同じくTOPANGA所属のマゴ選手と師弟関係を結んだグラビアアイドルの倉持由香、ミュージシャンのKenKen、そして高知のご当地キャラであるしんじょう君とユニークな顔ぶれ。
esports pressでは、ときど選手と顔合わせを終えたばかりの真鍋氏に、エキシビジョンマッチへの意気込み、これまでのゲーム遍歴、eスポーツに対する思いなどを直撃した。
――ゲーム遍歴から教えて頂けますか。
真鍋:僕はアタリの「フロッガー」からなので長いですよ。小学生の時からパソコンゲームとゲーセン通いをしていました。
――パソコンは何を使用していたんですか。
真鍋:主にハチハチ(PC-8800)、MSX、X68000ですね。ゲームをプレイするのはもちろんなんですけど、『ログイン』や『マイコンBASICマガジン』などのパソコン雑誌を見てゲームも作っていました。
――それは早熟ですね!オリジナルのゲームも作っていたんですか?
真鍋:オリジナルも10歳ぐらいから作っていて、同級生に無理矢理やらせてました。
――ゲーセン通いも同時期ですか?
真鍋:そうですね。当時はタイトーのゲームが好きで「バブルボブル」や「フェアリーランドストーリー」をやったり、ナムコのゲームも全般的に好きで「パックランド」「メトロクロス」「ドルアーガの塔」「イシターの復活」をやったり。シューティングではコナミの「グラディウス」シリーズにハマって、ゲーセンに入り浸っていましたね。
――当時、小学生でゲーセンに出入りするのは怖い時代だと思うのですが……。
真鍋:小・中学の頃はそうでもなかったです。小学校の時は東急文化会館(現ヒカリエ)の中にあるゲームセンターや目黒駅の屋上のゲームセンターに良く通っていました。怖くなったのは対戦型のゲームが主流になってから。
僕が高校に入ったあたりで「ストⅡ」が大ブームになりましたが、当時、小キックから投げてみたいなことをしたら、対戦相手から灰皿が飛んでくるような時代でした(笑)。
そういうハメ技のようなプレイを間違えてした場合は、「一回投げていいよ」って無防備の状態になってました。そうやってマナーは守っていたんですけど、あまりに勝ちすぎると相手が激怒して殴り合いのケンカに発展する様なこともありましたね(笑)。
――高校時代は「中目のダルシム」という異名があったそうですね。
真鍋:大袈裟ですけど、そう呼んでいる友達もいました。全キャラ試したのですが、確かにダルシムを使うことが多かったです。
――「ストⅡ」の大会にも出ていたとか。
真鍋:そうですね。ただ僕はこの手の本番に弱いんです。入試とかでもそうなんですけどアガッてしまうんです。今回のエキシビジョンマッチも、そういうメンタルの弱さが出そうで不安なんですが……。
――「ストリートファイター」シリーズ以外の格闘ゲームはやらなかったんですか?
真鍋:大学時代は「鉄拳」もかなりやったんですけど、あまり強くはなかったです。「ストⅡ」はノリでできるんですけど、「鉄拳」は覚えることが多くて全然勝てなかったですね。
――大学時代は格闘ゲーム一辺倒だったんですか?
真鍋:それが「鉄拳」を最後に、すぐに結果が出るような対戦型のゲームはやらなくなりました。その後はRPGもやっていたんですけど、仕事でプログラムを書くようになってからゲーム自体をやる時間がほとんど無くなりました。プログラミングが楽しくて、ほぼそれに時間を費やしていました。
――仕事でプログラムなどに携わるようになって、ゲームの見え方も変わったのではないでしょうか。
真鍋:ですね。改めてゲームのグラフィックは完成度が高いなと。特に『ストⅤ』は細かい筋肉の動きや技を出した際の軌跡、キャラのデフォルメまで、めちゃくちゃ細かく作り込まれていて本当に楽しめますね。

昔は自分が作るプログラムの環境と、ゲームを作る人の環境は全然違っていました。でも今はUE4だったりPhysXだったり自分が使っている環境もあって、何をやっているのかも理解できるので、よりすごさが分かりますね。
――仕事の面でゲームから影響を受けているところはありますか。
真鍋:ずっと影響を受けている気がします。僕らがやっていることは、お客さんの動きを解析して映像を作るなどインタラクティブやジェネレティブなものが多いんですけど、それってゲームがずっとやってきたことで。
最近はインタラクティブからコグニティブ、AIや機械学習に移行していますけど、その分野もゲームは歴史が長いですからね。
――小学生の頃からゲームを作っていた訳ですから、自然と刷り込まれている面もあるでしょうね。
真鍋:そうですね。数年前にビットコインの自動取引をアートにした作品を発表したのですが、「パックマン」のモンスターのアルゴリズムを参考に4種類のキャラクターを作ったぐらい、常にゲームの影響は受けているなと思います。
――日本のゲームと、海外のゲームに違いは感じますか?
真鍋:それほどたくさん海外のゲームをプレイしている訳じゃないので、そこまで分析はできないですけど、たとえばアメリカのゲームは映画の影響が強く、型が決まっていてコンテンツ勝負みたいなイメージがあります。
それに対して日本のゲームは、ルールとかシステムそのものの面白さを作るところが特徴なのかなと。あと「塊魂」みたいなキャラになりそうもないものを成立させるユニークさがありますよね。
それとゲームと音楽の関係性も独創的ですよね。メディアアーティストの岩井俊雄さんが手掛けたゲームは、今の音ゲーの元祖かと思いますが日本独自のアプローチがあったかと思います。
――真鍋さんはDJ活動も行うなど音楽の造詣が深いですが、ゲームミュージックで好きな曲はありますか?
真鍋:「グラディウス」の4面の音楽が好きでしたね。今でこそあの音色はコーラスをうまく使っているということがわかるのですが、当時はただ単にあの気持ち良いメロディと音色に惹きつけられていました。
当時は母がヤマハで働いていたこともあり、DX 7で音色を作って遊んだりBGMをコピーしたりしていましたね。やっぱり小学生時代に聴いていた音楽は今でも頭の中に残っていますね。
特にナムコのゲームミュージックは全般的に好きでした。メトロクロス、ドルアーガーの塔、パックランド。上げ始めたらキリがないですね。
――ここからは「GAME CENTERS IN OSAKA」についてお話を伺いたいのですが、どうしてエキシビジョンマッチの参戦を決めたのでしょうか。
真鍋:まずメンツが不思議ですよね(笑)。そこが面白そうだなと。あと「ストⅡ」は人生で一番やったゲームで、「ダッシュ」や「X」なども一通りゲーセンでやってきました。
ただ先ほども話しましたが、仕事でプログラムをやるようになってゲームから遠のいて、『ストⅢ』『ストⅣ』とやっていなかったんです。ただ『ストⅤ』になって操作が簡単になったという噂を聞いていて、そこに今回のお話を頂いたので、良い機会なのでやってみたいなと。
――では今回のイベントをきっかけに初めて「ストⅤ」をプレイしたんですね。
真鍋:まだ初めて一カ月ぐらいです。
――実際にプレイしてみていかがですか?
真鍋:先ほど、ときど選手とお話したんですけど、技やルールが複雑になり、また技の有利不利などの条件が厳密に調整されているため、ちょっとやそっとでは上達できないなというのが正直なところです。

昔は技も少なくてシンプルでしたけど、すごく覚えることが増えたなと。なので、やや困惑しています。それでもコンボは一通り出せますし、その複雑さも面白さだなと感じますね。
あと僕は音楽が好きなので、テンポやリズムが「ストⅤ」は楽しいです。コンボが決まった時の気持ち良さは、音楽的な感じがするんですよ。
――ときど選手とは面識があったんですか。
真鍋:今日が初対面でした。もちろんテレビなどで知っていましたし、今回のお話を頂いてから、ひたすらyoutubeでときど選手の動画を見ました。
周りにも「ストⅤ」好きは、けっこういるんですけど、「ときどさんに教えてもらえるなんていいな」と羨ましがられました。そういえばPerfumeののっちも「ストⅤ」をやっていて、フレンドリクエストをしたんですけど、まだ承認されてないです(笑)。
――ときど選手の活躍などもあって、日本でもeスポーツは盛り上がりを見せていますが、真鍋さんはeスポーツについてどのような印象を持っていますか。
真鍋:eスポーツって身体メインのフィジカルな戦いと違い基本的にはソフトウェアがメインなので、AI同士の対戦や、AIと人間の対戦が盛り上がったり、人とAIの協力体制が進化してきたり、今後将来的にもっと面白くなっていく領域だなと思っていています。
また、私は画像解析技術を用いたスポーツの演出の仕事をいくつか手がけていますが、eスポーツでも同じ様なアプローチが可能かなと思いました。
そのためにはゲームのソフトウェア自体に手を入れる必要があるのですが、たとえば単純なプレイバックではなくカメラの動きをプレイ中とは違った動きに出来る様な仕組みを作ったり、キャラクターの動きのデータを使って会場の照明などの装置をコントロールしたり、ゲームのデジタルの世界と会場のアナログの世界を連動させると面白そうですね。
――最後にエキシビジョンマッチの意気込みを聞かせてください。
真鍋:パーフェクト負けだけはしたくないので、少しでも相手にダメージを与えられたらなと(笑)。そもそも僕は前に出る人を光らせる役回りなのでドキドキです。ただeスポーツを知るチャンスでもあるので、当日が楽しみです。
取材・文:猪口貴裕
マゴ選手のインタビューはコチラ:「人に教えることで、自分の中で曖昧にしていた部分を明確にすることができる」マゴ選手が語るゲームを人に教えるということ
イベント詳細

「ストリートファイター」と豪華メンバーで送るeスポーツPRフェス「GAME CENTERS」が始動!
対戦格闘ゲームというジャンルを確立し、「eスポーツ」の代表的なゲームとしても世界中で人気を博している「ストリートファイター」シリーズ。
誕生から30周年を経て、あらゆる世代を魅了した「ストリートファイター」を愛する出演者と共に、音楽、グルメ、コスプレ、たくさんの魅力を詰め込んだ「GAME CENTERS」をカプコンが本社を置く地元大阪で5/26(日)堂々開催!
チケット
ALL STANDING TICKET(+1D)
▼ADV TICKET
【Part1】前売入場料:3,000yen
【Part2】前売入場料:3,500yen
▼DOOR TICKET
当日入場料:4,000yen
▼SFV COSPLAYER PHOTO SESSION TICKET(コスプレ撮影会券)
【1部】:10,000yen 【3部通し】:25,000yen
※別途入場券が必要となります
チケットサイト:https://gamecenters.peatix.com/
チケットぴあ:Pコード(152221)
ローソンチケット:L-CODE(52166)
イープラス:https://eplus.jp/
公式サイト:GAME CENTERS IN OSAKA
チケットサイト:https://gamecenters.peatix.com/