――先ほどおっしゃられたその世界との差をちょっとずつでも縮めるというのに関して、本国「Team MVP」との協力や連携はどのように図っていこうとお考えでしょうか?

竹田:どちらかと言うと圧倒的に日本から韓国に「練習方法教えて」「一緒に練習したいです」っていう状況で。今「Team MVP」が所有するゲーミングハウスは6個あるんですけど、7個目を僕が今度借りるってなった時に、日本人のチームのトライアウトをそこで受けさせたりとか、僕が「Counter-Strike」のチームを囲って4月に大会出るっていったら、1月〜3月まで缶詰にしたりするかもしれないですし。そういうゲーミングハウスは作ったりするんで、その時に韓国の強豪と毎日練習するだとか。それに新しい日本人来たってなったらそれは韓国内で面白いんですよ絶対。

4dNの時に僕らがやりたいやりたいって言ってきたのと変わんないような現象は作れるんだと思う。ただそれに強さが追いつかなきゃいけないから、僕らが選手のポテンシャルを見抜くところが大事なのかなって思ってて。

成長という面では、僕は4dNをやってそれを肌で感じてるんで、多分思っているよりもすごい経験値になるんですよね。はぐれメタルを毎秒ぶっ殺すくらいの(笑)。

――韓国のチームとの連携は選手だけでなく、スタッフにも経験させるような形もとる?

竹田:もちろんです。僕もチーム運営を日本でしたことあるけど、インターナショナルのチームを運営したことはないし、ここまでガチのチームを運営したこともないので。そこは今から僕が学ぶ部分ではあるけれども、学ぶというよりもそれを使って日本をもうちょっと良くするっていうことの方が意味合いとしては大きいのかな。

竹田氏の目から見た日本と韓国の違い

――韓国と日本のesportsは現状様々な面で差があると思います。竹田さんの目から見て日本と韓国のこの違いはどこにあると思いますか?

竹田:意識、単純に意識。韓国人は生まれたときからesportsをやってるし知ってるんですよ。僕ら世代で言うとファミコンと同じようにesportsをやっている。

インタビューに応じる「Team MVP Japan」代表の竹田氏

1997年にPCカフェ産業がめちゃくちゃ成長して色んなところにできて、そこから「BoxeR ※3」みたいなヒーローが出て、映画に出て、CMに出て、お金稼ぐようになって、2002年にはファンクラブの会員が40万人になってっていう背景があるんですよ。

韓国は国策レベルでヒーローを作って大企業もお金入れて、そりゃ一つのエンターテイメントコンテンツを作れますよね。僕はまだその時ファミコンをやってるんですよ。その差はやっぱり大きい。

韓国は財閥まで巻き込んでやってるし、そういう意味では彼らは最初に自分らで作ったって自負もあるから、それは堂々とリーグもできるし、韓国に行けば3つesports専用のチャンネルもあるんですよ。コンテンツを常に与え続けてるんで、ファンをキープすることもできるんです。だけどそれでも飽きてくる部分もあると思うから、今後は日韓戦をやるだとか、そういう世界になっていけば僕は良いと思う。

サッカーも、フレンドマッチみたいな日韓戦をやれば人が入って、チケット買ってユニフォーム着てっていうのがあるので。そうやっていかなければ大会に依存するだけで、チームの活動は大会に出るだけなのかっていうと別にそうではないし、ファンサービスもやるべきですし。まだ日本のチームがやってない色んなことを「Team MVP Japan」でやっていくと思います。韓国のチームもあって日本のチームもあるからこそできるスペシャルなこともあるはずなので。

それをやるにも、チームを持つことが僕にとっては最優先で。そうじゃないと何も始まらないし、僕が持ったこの思想に賛同してくれる人はもちろん協力してくれるだろうし。

それでいうとライバルもほしいです。4dNの時はライバルが国内にいなかったので。常勝は常勝ですごい良いと思うんですけど、常勝チームにはあまり成長がない。1位2位で切磋琢磨してるところっていうのは、常にお互いが刺激し合うとか、そういうのは他のスポーツも同じだと思うんですけど、すごく大事なんですよね。esportsの「リアルなスポーツの部分」をライバルがいることによってもっと見せられるのかもしれない。

ただ「Team MVP」だけはノン財閥なんですよ。だから僕はこうやって入りやすかった。だってSK Telecom ※4とかに「こんにちは!」って言って「俺入れてよ」とか言ったって「は?」って話じゃないですか。決まるとしても2日じゃ決まらないですし。

だから「Team MVP」はすごいパートナーとして組むには良くて、友達っていうのもあったけれども。そういう意味ではタイミングも良く、さらに「日本も今来てるね」っていうのも向こうは認識してて、その中で「Team MVP」ができることっていっぱいあるなと。

※3 BoxeR・・・韓国人プロゲーマー。「StarCraft」というゲームで人気実力ともにトップだった伝説的プレイヤー。
※4 SK Telecom・・・韓国最大の携帯電話事業者。世界で圧倒的な人気を誇るesportsチーム「SK Telecom T1」のスポンサー。

――先日流行語大賞のトップ10に「eスポーツ」が入りようやく認知度も高まってきた日本において、今後どういった動きや流れになってほしいと考えていますか?

竹田:求めることは僕が自分のチームに求めることとそんなに変わらないと思います。強くなって世界で活躍しようよ。

流行るのは良いんだけど、日本が勝たなきゃ意味がなくて。10年以上前のサッカーワールドカップを応援している日本人でしかないんですよ。絶対に行けた、でもベスト16みたいな。まぁそのステージにもまだ達してないと思うんですけど。

その上でやっぱりスターの必要性っていうのはすごい大事だと思います。カリスマ的な人orチーム。僕は、4dNは今でもやっぱカリスマ性を持ったチームだと思ってるし、他にも最近ちらほら見えてくるけど新たな伝説を作ったチームはまだいないと思います。

――さきほどからお話に出ていた、過去「Counter-Strike1.6」で活躍された4dNのメンバーの方も今後関わってくることはあるのでしょうか?

4dNとこれは全く別のプロジェクトでもちろん声をかけたいメンバーはいますけど、やりたい人がいれば全然話はするというくらいで。ただ4dNをやっていたから一緒にやろうよっていうのはちょっと違って、4dNをやった経験を活かして「Team MVP」とこういうことをしたいっていう話があれば僕はもちろんやりたいし、今「Team MVP」でこういうパーツが足りないから、元4dNのメンバーにこういうのを一緒にやらない?っていう可能性はあります。

ただ今はもっと広い視野で人を探したいなと思ってます。人が増えてきて組織をちょっとずつ大きくしようと思っているので、そこらへんは慎重に。

――本日都内某所でインタビューさせていただいてるんですけど、ここも今後関係してくるのですか?
竹田:はい。というか、もっとびっくりするようなこといっぱいあってこんなの5%くらいだと思います。この半年以内に今ある形からどんどん変わっていくとだけは言っておきます。

――めちゃくちゃ気になりますね(笑)。本日はインタビューありがとうございました。
竹田:ありがとうございました。

韓国の強豪チーム「Team MVP」を日本に連れてきた竹田”Buddha”恒昭氏。日本のesportsシーンに大きな影響を与える可能性が高い「Team MVP Japan」の動向を、esports press編集部では今後も追いかけていきたいと思います。

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