ーーそこでどういった対策を?
MOV:まずしのちゃんと同じことは出来るようになろうと思って、授業中でも晩御飯を食べてる間でも、指は永久コンボを練習して。同じ戦法で倒せるように。
ーー同じ武器を身につけて戦おうと。
MOV:自分ではそれを倒す戦法が思いつかなかったので、聞く人もいなかったですし。
ーーお互い画面端でビョンビョン。
MOV:来いよ、来いよって(笑)。
ーー その後本格的に格ゲーをやるようになるのはいつ頃ですか?
MOV:「Xスト」が置いてある隣の台に、『ストリートファイターZERO2』(以下、ストZERO2)も置いてあって、空中に浮いたり、ビームを出したりしないのが逆に渋くて格好良いなと思って。
ーー 1周回ってって感じで。
MOV:そうですね。きっかけがあって、小学校の友達にイケちゃんっていたんですけど、彼がサターン版の「ストZERO」 を持っていたんです。
その頃にはもう格ゲーの心得もあったので、小1の時みたいにはならないとイケちゃんに挑んだんです。そうしたらイケちゃんが、「隠しキャラ出してやるよ」ってピンクの胴着のキャラを出してきたんですよ。
リュウとケンは子供っぽいと思っていたので、ピンクの胴着のキャラが渋くて格好良く見えたんです。それで向こうは、黒い胴着の豪鬼を使ってきて、何故かボコボコにされて。
小1の時だったら拗ねて辞めていたかもしれないんですけど、その頃のぼくは格ゲーにどっぷりだったので、これは悔しいなと思って。その帰りに「ストZERO」を買って、家で一生懸命練習したあたりからストリートファイターになっていきました。
ーーダンと豪鬼ではキャラ差があるわけじゃないですか。それは克服できたんですか?
MOV:「ストZERO」のダンは今ほどギャグキャラっていうわけじゃなかったし、火力が高いっていう強みもあったので。まあ小学生同士の実力差だったら。
ーー 普通に楽しめるぐらいには。
MOV:いや、もうボコった。当時ぼく1人で辿り着いた戦法は、当て投げをしまくるっていう(笑)。
ーー それから中高生ぐらいなるともう本格的に ?
MOV:環境が変わったのが大きいですよね。中学で東京の学校に行くようになるんですけど、同級生に格ゲーをやる人間が多くて。
金沢文庫っていう横浜のど田舎から片道1時間半近くかけて通うんですけど、最寄駅にも格ゲーをやる友達が結構いて、ときどもその中にいたんですけど。
小6の夏に塾の夏期講習があって、1人でお弁当を食べていたら、後ろで「ストZERO2」の話をしていて。
「俺強いんだぜ」みたいな話をしてるのが鼻持ちならなくて、「俺の方が強いし」って話に割り込んで、「はっ?俺の方が強いし」みたいな言い合いになった奴が同じ中学に合格して入っていて。
最寄り駅も一緒だったのでつるむようになったキーパー君っていうのがいるんですけど。家で一緒にやったり、キーパー家でやったり、最寄り駅の駄菓子屋ゲーセンでやったり。あとは学校に入って1ヵ月ぐらいで、近くのゲーセンに通うようになったり。
ー一行動範囲が広がっていって。
MOV:学校の近くのゲーセンに行ったら、格ゲーが強いと噂になっていた5組の谷ロもすでにいたし。
自分の学年は格ゲーをやるやつが本当に多かったので、上級生は相手じゃなくて、大会とかあるらしいからそっちに行ってみようぜってなっていって。
中1の終わりぐらいからは高田馬場とか神保町、あとは新宿なんかの大会に行くようになりました。
栄光と挫折を味わった学生時代の経験
ーーその後『ストリートファイターⅢ 3rd Strike:(以下、3rd)に移っていくと思うんですが。
MOV:最高傑作みたいな触れ込みで出る前から盛り上がってはいたので、これはやらなければって感じで。
ーー始めてみてどうでした ?
MOV:それが最初は全然勝てなかったんですよ。1日にゲームで使えるのは300円だったので、同じ組み合わせを何試合もやるとかは全然できない。
基本コンピューター戦で遊んで、そのキャラのコンボを練習して。対戦は一応強い人がいるゲーセンに行って、「あいつがあれだぜ」みたいな感じで。
ーーそこからどうやって強くなっていったんでしょう。
MOV:そもそも自分はまだ使うキャラも決まっていなかったんですが、強い人達はどのキャラが強いとか大体情報が共有されていたんです。なので実際に新宿におもむいて、強い奴の真似をするっていう(笑)。
負けるたびに対策を練るどころか、あっちのキャラの方が強そうだ、みたいな感じでやり直したり、あの人のコンボはこんな感じだったっていうのを思いだしながらコンピューター戦をやったり。
あとは当時、高田馬場のゲームセンターで大会のビデオを貸出してまして、それを借りて、みんなで昼休みに学校の図書館で見たりして。
このキャラはこういうのが強いとか、大会出ている人はみんな汚い戦法ばっかりするよなって話ながら。汚いって思う感覚からいらないのかなって(笑)。
ーー 部活みたいな状態で、格ゲーを全員で研究していたと。その当時、汚いプレイはしない、みたいな対戦観はあったんですか?
MOV:しのちゃんから入ってるので、自分はあまりないですね。ただ、ときどは最初にユリアンってキャラを使っていたんですけど、その戦法は一生バックジャンプ大Kと中Pでゲージを溜めて、近寄ってきた相手を走って後ろに投げて、エイジスリフレクターでボコボコにするっていう、どこかで聞いたような戦法で(笑)。
だからときどの戦法は、さすがに寒いなってのがあったんですけど(笑)。そのときどが『KING OF FIGHTERS’98』の全国大会に出場したんですよ。彼なら大人たちを薙ぎ倒して優勝できるんじゃないかと期待して、津田沼まで応援に行ったんです。
そうしたら、あのときどが誰にも勝てなくて、しかも負けている内容が、上手く待てずに稚拙な攻めをさせられて、待ち負けているっていう。
ーー待っていても勝てないから攻めさせられて。
MOV:でも処られちゃうっていう。完全に大人と子供みたいで。全国大会に出る人は、ときどが寒いとかそういう次元じゃなく、もっと厳しい世界なんだって子供心に思って。
ー一壁を感じた時点で、戦法がどうとか言っている場合じゃないと。
MOV:それが衝撃だったのもあって、「3rd」 では勝つためにできるだけ何でもしようってなりましたね。
ーー そこから勝てるようになるまでというのは?
MOV:19年目の今も春麗が結局最強キャラなんですけど・・・
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