皆さんこんにちは、Komaryuです。5月11日〜23日の間で開催された、レインボーシックスシージのYear5を締め括る世界大会である「Six Invitational 2021」。当記事では、トップ6チームの紹介を中心として、この大会を振り返っていこうと思います。

大会概要

グループステージ

  • A、Bの2グループに分かれての総当り
  • Bo1(1マップのみ)
  • Virtus.proとWildcard GamingがCOVID-19の影響により参加不可能となったため、Aグループは10チーム中トップ9チーム、Bグループは8チーム中トップ7チームがPlayoffsへ進出
プレーオフ

  • ダブルエリミネーション形式
  • Bo3(2マップ先取)
  • 各グループのトップ4チームはUpper Bracket, それ以下のチームはLower Bracketからスタート
  • Upper BracketからGrand Finalへ進出したチームには1マップ分のアドバンテージが与えられる
  • Grand FinalはBo5(3マップ先取)であり、各マップの延長戦で勝利するには2ラウンド連取が必要(アンリミテッドオーバータイム)

トップ6チーム紹介

順位 チーム
1 Ninjas in Pyjamas
2 Team Liquid
3-4 MIBR
3-4 TSM
5-6 FaZe Clan
5-6 Oxygen Esports
7-8 Team Empire
7-8 BDS Esport
9-12 Team oNe eSports
9-12 Parabellum Esports
9-12 FURIA Esports
9-12 Mkers
13-16 Spacestation Gaming
13-16 G2 Esports
13-16 DarkZero Esports
13-16 Cloud9
17-18 CYCLOPS athlete gaming
17-18 Giants Gaming

上の最終順位をご覧頂きますと、トップ6はNiP、Liquid、MIBR、TSM、FaZe、OXGとなります。順位が下の方から見ていきましょう。

5-6位「Oxygen Esports」

ロスター

  • FoxA
  • LaXInG
  • VertcL
  • Yoggah
  • kyno
  • HOP3Z(コーチ)
  • Redeemer(コーチ)

Year5 〜 S.I.2021前まで戦績

大会名 順位
PL Season11 NA 4位
US Division 2020 Stage1 3位
Six August 2020 Major 4位
US Division 2020 Stage2 3位
Six November 2020 Major 4位
US Finals 2020 3-4位
NA League 2021 Stage1 1位

Oxygen Esportsは、過去は「Team Reciprocity(REC)」や「Cloud9」といった組織に属していたロスターです。FoxAとLaXInGのコンビはCloud9時代から全く変わらずチームの柱であり続けています。
結成時のCloud9は、「NA Pro League」に出場していながらも、あまり注目を集めるようなチームではありませんでした。Season8の前半戦では7戦2勝2分3敗。しかしながら、「DreamHack Montreal 2018」での優勝以来、チームは飛躍的に成長します。

Season8は結局6位で終えましたが、「US Nationals 2018」というアメリカ王者を決める大会ではベスト4。そして先日引退したSkysを迎え、「Team Reciprocity」として挑んだ「Six Invitational 2019」では、当時NAトップに君臨していた「Evil Geniuses」を準々決勝で降し、「野良連合」と同じベスト4という結果を出したのです。

Year4に入り、「NA Pro League Season9」ではNA 3位、「Six Major Raleigh」の地域予選でも準決勝で敗退し、2度世界大会への出場を逃すも、「NA Pro League Season10」では、Evil Geniusesを押しのけて2位に入り、日本で開催されたあの印象的な「R6 Pro League Season10 Finals」に出場し、ベスト4という結果に。

その後、SkysとMarkTheSharkが外れ、Nyxと現在もOXGとして活躍しているVertcLを迎えて出場した「US Nationals 2019」では準優勝。「Six Invitational 2020」への備えは着々と進んでいるかのように思われました。しかしながらSix Invitational 2020では「G2 Esports」「BDS Esport」に敗れてグループステージ敗退。昨年のベスト4の記憶があっただけに、選手達やファンの落胆は計り知れないものだったでしょう。

そしてYear5。Nyx、Retroを外し、Slashug、b1ologicを迎えて出場したNA Pro Leagueでしたが、8月と11月に行われた「Mini Major(地域別のMajor大会)」ではいずれも4位。今年1月のNA Finalsでもベスト4に終わり、下位チームを寄せ付けない強さはあってもなかなか頂点には立てない、といった印象が拭えずにいました。

本来2月に開催が予定されていた「Six Invitational 2021」は5月に延期され、OXGは2021シーズンのスタートを前に更なるロスター変更を行います。Year2から最前線で活躍してきたSlashugとb1ologicを外し、トップリーグへの出場は全くの初であった若手Yoggah、kynoの2人を加えたのです。そんなロスター変更後間もないStage1では1位に。OXGは再び大きな期待を背負ってSix Invitational 2021に挑みます。

Group Stageでの戦いは厳しいものでした。初戦では同じNAの予選を勝ち上がって出場を決めた「Parabellum Esports」を7-0で倒しましたが、2日目終了時点で獲得していた勝ち星はその1つのみ。昨年の辛い敗退を想起させるかのような展開を見て、ファンの間にはかなりの不安が募ったことでしょう。ここで終わらなかったのがOXGでした。

迎えた最終日、TSM相手に金星を獲得していた「Mkers」と「Giants Gaming」の両方をあっさりと破り、Year4の頃から苦手としていた「Spacestation Gaming」もフルラウンドの末に破り、なんと3連勝でUpper Bracketへ。あわや敗退という窮地から、優勝すら狙える立ち位置に駆け上がったのです。

Playoffs初戦、相手取ったのはGroupAを1位で突破した「Team Empire」。Twitter上で行われたコミュニティ投票ではEmpireへの票が74.1%、OXGには25.9%と、”ロシアンサイボーグ軍団”の予想だにしない快進撃を受けてか、実に3倍近くの人々がEmpireの勝利を予想していました。

たった2時間後に出た結果を見て、多くの人が驚愕したことでしょう。OXGはEmpireを2-0のストレートで倒していたのです。勿論、決して容易な戦いではなかったにしろ、2マップ共延長に縺れることすらなく、OXGはまるで当然のことかのようにUpper Bracket Semi Finalsへと駒を進めました。

Upper Bracket Semi Finalsと続くLower Bracket Round4にて、OXGは7-8、5-7という全く同じスコアでMIBR、TSMに敗れます。幾度となく経験してきた “あと一歩”が届かない接戦。もう何度目かも分からない惜敗の末、Oxygen Esportsは5-6位でInvitationalを終えました。
それでも、今大会におけるOxygen Esportsの活躍は、Stage2以降の発展の見込みを与えてくれるものでした。加えて、Bo1で行われたStage1での成績も間違いなくそれを保証しています。

このSix Invitational 2021では、数多くのチームが大接戦の末の敗北を経験しました。その一つであるOxygen Esports。次の世界大会までに、あと一歩の壁を越えられるチームになることはできるでしょうか。

5-6位「FaZe Clan」

ロスター

  • Astro
  • cameram4n
  • Cyber
  • Bullet1
  • soulz1
  • Ramalho(ヘッドコーチ)

Year5 〜 S.I. 2021までの戦績

大会名 順位
PL Season11 LATAM 4位
Six August 2020 Major BR 2位
BR6 2020 Regular Season 5位
BR6 2021 Stage1 1位
CES 2021 Stage1 5位

FaZe Clanの原型は、Year1の時点で既に存在していました。Year1のPro League Finalsには、LATAM(ブラジル)チームの出場枠がありませんでしたが、FaZe Clanの原型であった「Santos Dexterity」は、Year1の最大大会であるSix Invitational 2017で、初めて世界大会に参加したLATAMチームとしてベスト4という結果を残していました。

当時からチームの中心であったAstroとcameram4n。この2人は、cameram4nが「MIBR」へと移籍したYear5を除き、ずっと一緒にブラジル及び世界のトップシーンで活躍してきました。彼らはこれまでに開催された5回のSix Invitationalの全てに出場した、世界でたった7人の選手(Astro、cameram4n、 Bosco、 Canadian、 Ecl9pse、 LaXInG、Skys)にも含まれています。

そんなAstro、cameram4nを軸とするロスターがFaZeに入ったのは2018年1月、つまりSix Invitational 2018の直前です。驚くべきことに、このFaZe ClanはSix Invitational 2018以降の全ての世界大会(Pro League Finals以上の大会)に出場してきました(Team FONTT時代を含むとYear2 Season2 Finals以降全て)。しかしながらFaZeは、世界大会においてかなり致命的と言える問題を抱え続けていました ── 世界大会における一般的な対戦方式であるBo3において、NAチームを苦手としていたのです。

大会名 NAチーム 結果
S.I.2018 Evil Geniuses 1-2 ベスト8
Six Major Paris Rogue 1-2 Group Stage敗退
S.I.2019 Team Reciprocity 1-2 Group Stage敗退
Six Major Raleigh DarkZero Esports 2-0 ベスト8
DreamHack Montreal 2019 Team SoloMid 1-2
DreamHack Montreal 2019 Susquehanna Soniqs 1-2 Group Stage敗退
PL Season10 Finals DarkZero Esports 0-2 ベスト8
S.I.2020 DarkZero Esports 1-2 Group Stage敗退

Year2からYear4の全てを見ても、FaZeがNAのチームをBo3で破ったのはたった1回のみ。こういったNAチーム相手の敗戦により、FaZeは世界大会で4度もGroup Stage突破を阻まれているのです。ブラジルにとって看板チームの1つであるFaZeがNAチームを苦手としていたことから、ブラジルはコミュニティ全体としてNAを嫌っている傾向すらありました。

さて、Year5に入ってから、FaZeは短いスパンで立て続けにロスター変更を行っていました。Stage1を前にしてcameram4nを外してliveを迎え、Stage2前にはmavが外れKDSが加入。しかし「August Major」ではNiPに敗れ準優勝、「November Major」や「BR6 Finals」には出場すらできず、ロスター変更による成果は中々挙がりませんでした。

「Six Invitational 2021」が延期され、FaZeはOXGと同様2021年シーズンのStage1開始を前に大規模なロスター変更を行います。ion、Yoona、liveを外し、MIBRのロスターであったcameram4n、Cyber、Bullet1、soulz1の4人が入ったのです。cameram4nにとっては丁度一年越しの帰還となりました。2020年シーズンでは低迷したFaZeは、このロスター変更後に出場した「BR6 2021 – Stage1」では堂々の1位に。ブラジル王者・FaZeのイメージが戻ってきました。

Six Invitational 2021のGroup Stageは全てBo1。加えて、FaZeの属するGroup Aには「DarkZero Esports」しかNAチームがいませんでした。FaZeファンとしてはホッとするグループ分けだったかもしれません。FaZeは最終的にGroup Aのトップ3となった「Team Empire」「BDS Esport」「Team Liquid」の3チームと「Cloud9」を除く5チームに勝利、つまり過去の対戦成績では1勝2敗であったDarkZeroにも勝利し、Upper Bracketに進みます。

Upper Bracketでの初戦は「TSM」。苦手としているNAチームであり、DreamHackで敗れた相手であり、優勝候補の筆頭でもあったチームです。FaZeはシリーズスコア1-1で迎えた第3マップ・カフェの延長戦にて、先にマッチポイントを奪われながらも勝利します。この日、5月19日が、FaZeの選手達にとって、特にFaZeを片時も離れた事が無かったAstroにとって、歴史的な日となったことは間違いないでしょう。

この後、FaZeは優勝したNinjas in Pyjamasと、準優勝したTeam Liquidに敗れてSix Invitational 2021を去ります。とはいえ彼らは、失われつつあった「強いFaZe」のイメージを取り戻したと言えるでしょう。Stage1のブラジル王者、尚且つ世界ベスト6のチームとして、Stage2以降の活躍が期待されます。

4位「Team SoloMid」

ロスター

  • Achieved
  • Beaulo
  • Merc
  • Geometrics
  • Chala
  • Pojoman(コーチ)
  • Daeda(ストラテジックコーチ)

Year5 〜 S.I. 2021前までの戦績

大会名 順位
PL Season11 NA 2位
US Division 2020 Stage1 2位
Six August 2020 Major NA 2位
US Divison 2020 Stage2 2位
Six November 2020 Major NA 1位
US Finals 2020 1位
NA League 2021 Stage1 5位

TSMはYear4から台頭してきたチームですが、競技シーンを少しでも見ている人なら誰もがこのチームを知っていることでしょう。加えて、組織自体を見ても複数のタイトルでかなりの知名度や人気を誇っているのがTSMです。

前身の「Excelerate Gaming」は「NA Pro League Season8」でチャレンジャーリーグからプロリーグに昇格し、Season9を6位で終えました。Season10開始を目前に控えた2019年6月、TSMが「Excelerate」ロスターだったAchieved、b1ologic、Krusher、Pojomanに加え、FultzやYoggahとチームメイトだったMerc、そして以前から配信者として有名だったBeauloを獲得してチームが完成します。

Bo1で行われた「NA Pro League Season10」の結果を見ると、TSMの成績は決して華々しいものではありませんでしたが、Bo3で進行する「DreamHack Valencia」と「Six Major Raleigh」ではベスト8。そして忘れもしない、あの「DreamHack Montreal」では、「FaZe Clan」「Rogue」「BDS Esport」「Team Liquid」と、各地域の猛者をなぎ倒し、マイナー大会とはいえ、豪華な面々が出揃っていた世界大会で優勝しました。Grand FinalでBeauloがTeam Liquid相手に見せたオールキルは、今でも僕の目に焼き付いています。

その「DreamHack Montreal」での優勝によって「Six Invitational 2020」の出場権を得たTSM。Group Stageでは、US Nationals 2019王者「Spacestation Gaming」、「Pro League Season10 Finals」王者「NaVi」、そしてEU Pro League Season9、Season10と連続でEU2位を維持してきた「Rogue」という名だたる強豪3チームと共にGroup Bで戦い、Spacestation Gamingには敗れるも、EUのトップクラスの2チームを打倒してPlayoffsに進みます。Ninjas in Pyjamas、Fnaticをストレートで破って迎えたUpper Bracket Final。リベンジマッチを兼ねて挑んだSpacestation Gaming戦に敗れ、Lower Bracket FinalではPlayoffs初戦で破ったNiPに敗れ、Six Invitational 2020を3位で終えました。


悔しさも束の間、Year5に入り、TSMは更なる進化を遂げます。「August Major」ではDarkZero Espprtsに敗れて準優勝となるも、「November Major」「NA Pro League Finals」の両方で優勝し、文句無しのNA王者となりました。全地域を見渡しても、Year5において開催されたMini Major 2回及び、Regional Finalの内、2大会以上を制覇したのはCloud9とTSM、そしてサブリージョンであるメキシコの「Estral Esports(今年3月に解散)」のみです。

そしてYear5の締め括り、「Six Invitational 2021」。Group BのTSMは、「Rogue」「Chaos」「NaVi」「Tempra Esports」を倒して地域予選を勝ち上がってきたイタリアの新星「Mkers」や、我らがAPACの「Giants Gaming」に敗れるも、首位でGroup Stageを突破します。昨年は勝てなかったSSGやNiP相手にも快勝した姿を見ると、彼らが世界王者となる見込みは十二分にありました。

しかし、TSMを思わぬ逆風が襲います。Playoffs初戦・FaZeとの対戦では、第3マップで先にマッチポイントに手をかけるもフルラウンドの末敗北。頂点だけを見つめてきた彼らが、Playoffs初戦で早くもLower Bracketの後が無い戦いに落とされたのです。そんな悪夢のような展開にもTSMは怯みませんでした。Group Stageでは敗れたMkersを今度はストレートで撃破し、同じく優勝候補でありながらNiPに惜敗したBDS Esportも破り、復活を遂げた帝国・Empireを真正面から叩き潰したOXG相手の接戦も制し、Lower Bracket Round5、Six Invitational 2020では届かなかったGrand Finalまであと2つというところまで来ました。

対するはTeam Liquid。優勝したDreamHack Montrealの決勝で対決した相手です。第1マップ・カフェは7-5で制し、第2マップ・山荘を7-8で落としたTSM。第3マップ・オレゴンも接戦になるかと思われましたが、前半の防衛でラウンドを重ねることができず、Team Liquid相手に遂に敗れ去りました。

Six Invitational 2020では敗れたSpacestation Gamingを越え、NAでの冠を2つ引っ提げて挑んだSix Invitational 2021でしたが、彼らの夢は再び破れ、頂きに辿り着いたのは同じくSpacestation Gaming相手に苦渋を飲んだNiPでした。もはや誰もが世界トップクラスであることを疑わない高みにまで登り詰めたTSM。その実力を更に昇華させ、今度こそ、”TSMの時代” を作り上げることができるでしょうか。

3位「MIBR」

ロスター

  • LuKid
  • Reduct
  • Faallz
  • FelipoX
  • Rappz
  • Budega(コーチ)
  • Guille(マネージャー/アナリスト)

Year5 〜 S.I.2021までの戦績

大会名 順位
PL Season11 LATAM 8位
Six August 2020 Major BR 4位
Six November 2020 Major BR 2位
BR6 2020 Regular Season 1位
BR6 Finals 2020 3-4位
BR6 2021 Stage1 3位
CES 2021 Stage1 2位

今年のStage1が始まる直前、南米地域では大規模なロスターシャッフルが行われました。以前のMIBRに属していた4人が「FaZe Clan」へ移籍し、元々FaZe Clanにいた4人は内3人が「Black Dragons」、1人が「Team oNe」へ。そしてそのTeam oNeに元々居たロスターが、そのままMIBRに入ったのです。

このMIBRについて良く知る人は少なかったことでしょう。なにしろ、このロスターの世界大会出場経験はほぼ皆無。彼らが出場した世界大会は「Allied Esports Vegas 2019」と「DreamHack Valencia 2019」の2つのみ、そしていずれもマイナー大会ですので、Pro League Finals以上の世界大会には出場したことが無い、ということになります。さらに言えば、Allied Esports VegasやDreamHack Valenciaに出た時のTeam oNe(現MIBR)にFelipoXやRappzはいませんでしたので、2人にとっては全く初の世界大会でした。

さて、Year4、5のTeam oNe(現MIBR)の成績は、Season10でブラジル3位、 「August Major」で4位、「November Major」で準優勝、「BR6 Finals」でベスト4、そして「CES 2021」Stage1で準優勝を果たします。「Ninjas in Pyjamas」「Team Liquid」「FaZe Clan」「MIBR(当時のロスター)」らが火花を散らす中で高順位を保ち続けていました。それでもこのチームが比較的目立たずにいたのは、やはり世界大会出場経験がほぼ無かったからでしょう。

「SiegeGG」のインタビューにおいて、マネージャーのGuilleは「グループBでトップ4に入ることはできるだろうと考えている」と語っていました。結果は彼の言う通り。

MIBRは「TSM」と「Spacestation Gaming」に敗れるも、TSMと同じ5勝の2位でグループステージを突破。ほぼ初の世界大会でありながら、あっさりとUpper Bracketに進みます。
Playoffsに入ってもMIBRの強さは揺るぎませんでした。「November Major」やCESのGrand Finalでは勝てなかったteam Liquid、そしてTeam Empireを破った「Oxygen Esports」をどちらも接戦ではありましたがストレートで打倒し、Ninjas in Pyjamasと共にUpper Bracket Finalへ進んでBR6チームのGrand Final進出を確定させます。

そしてそのNinjas in Pyjamas戦でも、MIBRは大きな大きな勝利の目前にまで手を伸ばしていました。第3マップ・クラブハウスでは前半で1-5とリードされるも後半で5-1を取り返し延長へ。延長戦でのマッチポイントを先に掴んだのはMIBRでした。しかしGrand Finalでの結果も大きく左右するこの試合を最終的に制したのはNinjas in Pyjamas。翌日のLower Bracket FinalでMIBRは勢いに乗るLiquidに惨敗し、初のSix Invitationalで世界王者の称号を得る、という彼らの夢は儚く散りました。

「Six Invitational 2021」を3位で終えたMIBR。しかしながら、彼らには間違いないと断言できるほどの伸び代があります。以前属していたTeam oNeとMIBRの間には、組織の規模の面で圧倒的な差があるのです。現ロスターは移籍してから僅か2ヶ月。約10ヶ月後、「Six Invitational 2022が」開催されるであろう頃には、組織の手厚いサポートを後ろ盾に、他の何者をも寄せつけない絶対王者となっているかもしれません。

準優勝「Team Liquid」

ロスター

  • NESK
  • S3xyCake
  • psk1
  • Paluh
  • muringa
  • Silence(コーチ)
  • Sensi(マネージャー/コーチ)
  • Rafa(ジェネラルマネージャー)

Year5 〜 S.I. 2021までの戦績

大会名 順位
PL Season11 LATAM 1位
Six August 2020 Major BR 3位
Six November 2020 Major BR 1位
BR6 2020 Regular Season 3位
BR6 Finals 2020 2位
BR6 2021 Stage1 2位
CES 2021 Stage1 1位

日本時間での2021年5月23日午前4時07分、「Six Invitational 2021」におけるブラジルチームの優勝及びトップ3入りが決まりました。それを確定させたのは誰あろう「Team Liquid」。過去にもブラジルチームとして偉大なる歴史を作ったLiquidが、このSix Invitational 2021でもブラジルにとって忘れ難い瞬間をもたらしたのです。

そんなLiquidの歴史は、Year2にまで遡ります。Liquidは2018年1月に「MOPA TEAM(ex-BRK e-Sports)」を獲得してレインボーシックスシージの競技シーンに参入。直後の「Six Invitational 2018」ではGroup Stage敗退に終わるも、Year3の「Pro League Season7 Finals」にて、Liquidは当時の世界王者「PENTA(後のG2 Esports)」を打倒し、史上初めて世界大会で優勝したブラジルチームとなります。そう、これこそがLiquidの作った偉大なる歴史です。

更に言えば、その時のPENTAのメンバーはPengu、Fabian、Goga、jNSzki、Kantorakettiの5人。この後「Six Major Paris」「Pro League Season8 Finals」「DreamHack Winter」「Six Invitational 2019」の全てで優勝し、R6S史上最高のチームと呼ばれたロスターでした。対してLiquidは、この後Season7 Finalsを超える結果がなかなか出せませんでした。Six Major ParisではGroup Stageで敗退、Season8 Finalsには出場できず、DreamHack WinterのPlayoffsでは再びG2 Esports(Season7でのPENTA)と対戦しましたが、1-2で敗北しています。

LATAM予選を勝ち上がって出場した「Six Invitational 2019」。LiquidはGroup Stage初戦で「Mock-it Esports」に敗れ、再び敗退かと思われた中、続く「mantis FPS(現Cloud9)」戦で勝利し、リベンジマッチとなった2度目のMock-it Esports戦ではS3xyCakeの伝説的なクラッチもあってPlayoffsへ進出します。

Playoffs初戦の相手は「Team Empire」。最終的に準優勝という結果を残したTeam Empireでしたが、Liquidは彼らを相手に1マップを先取し、続く第2マップでも開幕から3ラウンドを連取と、急成長の途上にあったロシアの帝国を一時は追い詰めていました。

Six Invitational 2019と言えば日本代表であった「野良連合」のベスト4、そしてTeam Empire相手の惜敗が印象的だったことでしょう。しかしこのLiquidも、Team Empireと互角の戦いを繰り広げたチームの一つだったのです。LiquidはTeam Empireに敗れてベスト8でこの大会を終えましたが、これは出場したLATAMチームの内でトップの成績でした。

Liquidが今のロスターになったのは2019年の5月末。Pro League Season9 Finals後のことでした。LiquidはSeason9 FinalsとSix Major Raleighの出場を逃しますが、「Brasileirão 2019」PlayoffsではBo5のGrand Finalにて前期王者「FaZe Clan」を破り、ブラジル王者となります。

そしてLiquidは「Six Invitational 2020」の出場権を得るため、「DreamHack Montreal 2019」に出場。「Six Major Raleigh」で Team Empireに敗れるも尚事実上の世界2位に君臨していた「G2 Esports」や、LATAM勢にとっての宿敵であった「Evil Geniuses」らを打倒し、Grand Finalに進出しますが「TSM」に敗れて準優勝となります。LiquidはSeason10 Finalsへの出場も逃し、地域予選と直接招待を除く最後の出場権を懸けて「OGA PIT」に出場。Liquidは「BDS Esport」「Luminosity Gaming」「MIBR」そして後のYear4王者「Spacestation Gaming」の全てを撃破し、たったの2マップしか落とすことなくこの大会を制覇。

ブラジル王者として、そして優勝候補の一角としてSix Invitational 2020に挑みました。Liquid、Ninjas in Pyjamas、MIBR、Giants Gamingと、4チーム中3チームがLATAMというGroup Cに入れられたLiquid。Giants gamingには危なげなく勝利するも、当時苦手としていたNinjas in Pyjamas、そしてむしろ得意としていたMIBRを相手に敗れ、なんとGroup Stageで敗退。NESKは涙を流すほどに落胆していました。

カムバックを誓って迎えたYear5。Liquidは好成績を保ちます。Season11ではLATAM 1位となり、「August Major」では3位、「November Major」では優勝し、BR6 2020 FinalsではMIBR(現FaZe)に敗れて準優勝となるも、今年4月に行われたCESでは優勝し、LATAM王者として「Six Invitational 2021」に挑みました。

Group StageではTeam Empire、BDS Esports、Cyclops Athlete Gamingに敗れるも3位でUpper Bracketに進出したLiquid。Playoffs初戦で同地域のMIBRに敗れ、TSMと同様優勝候補ながら早々にLower Bracketへと追いやられます。優勝が大きく遠のく痛い敗北でしたが、Liquidはここから本領を発揮しました。G2をNAチームとして初めて破ったカナダ代表「Parabellum Esports」、そしてGroup Stageでは敗れたTeam Empireの2チームをストレートで打倒し、労せずしてLower Bracket Round4へ。

FaZe Clan戦では第2マップ・山荘をフルラウンドの末落とし、第3マップへ縺れ込む展開となりましたが、その第3マップ・海岸線では7-3と快勝。Liquidはこの時点でベスト4以上を確定させ、Lower Bracket Final進出をかけ、DreamHack Montreal 2019の決勝で敗れた相手であるTSMと対戦します。

そのTSM戦、ピックマップであったカフェを落としたLiquid。後が無い状況で迎えた第2マップ・山荘にて、結成当初からLiquidの看板を務めてきたNESKが爆発しました。15ラウンドを戦って勝利したLiquidの中で、NESKはなんとオールキルを含む23キルの活躍を見せたのです。同マップにてTSMのBeauloも17キルと奮闘しましたが、それすら遠く及ばないように見える圧倒的な数字でした。もちろんLiquidと同じく優勝を目指し戦っていたTSMにとって、NESKは悪魔や鬼神の類として映ったことでしょう。彼の活躍で第3マップ・オレゴンへと繋いだLiquidは、前半の攻撃で5-1と大きく突き放し、そのまま逃げ切ってTSMに勝利。決勝戦かと見紛うほどの盛り上がりを見せたこの一戦を制し、Liquidは “ブラジルの優勝” を確定させました。

ブラジルの優勝が決まっても、LiquidのSix Invitational 2021はまだ終わっていません。最終日、Lower Bracket FinalでLiquidはPlayoffs 初戦にて敗れた相手であるMIBRと激突します。しかし、この時のLiquidは一味違っていました。NESKとPaluhの2大エースが乗りに乗っていたからです。NESKは2日連続のオールキルを含む27キル、Paluhは2マップをプレイしながら24キル8デスと、今度は2人揃っての大爆発。MIBRを2マップ共に7-2で破壊し、LiquidはLower Bracket Round2から遥々Grand Finalへと駒を進めました。そのGrand Final。第1マップをNiPが取り、第2マップ, 第3マップを連取したLiquid。しかし勝負の第4マップ・領事館にて、Liquidは幾度となくクラッチによってラウンド獲得を阻まれ、最後の最後で力尽きました。

TSMと同様、2年連続で優勝候補としての期待を背負い、Six Invitationalに出場したLiquid。またも夢破れる形で終わってしまいましたが、彼らは昨年経験したどん底を糧に、今までに無い勝負強さをもって世界2位の称号を得ました。Grand Finalでも、「1マップアドバンテージが無ければ或いは…!」と思わせるような追い上げを見せたLiquidには、今後も世界一への期待がかけられることでしょう。

優勝「Ninjas in Pyjamas」

ロスター

  • Psycho
  • Kamikaze
  • Julio
  • pino
  • Muzi
  • Mity(コーチ)
  • BOB(マネージャー)

Year5 〜 S.I. 2021までの戦績

大会名 順位
PL Season11 – LATAM 2位
Six August 2020 Major – BR 1位
Six November 2020 Major – BR 3位
BR6 2020 Regular Season 2位
BR6 Finals 2020 3-4位
BR6 2021 – Stage1 5位
CES 2021 Stage1 4位

「Six Invitational 2020」のGrand Final。SSGコールがPlace Bell(試合会場)に響き渡る中、悲しみに打ちひしがれるブラジル人達がいました。第1マップ・ヴィラ、第2マップ・国境を瞬く間に連取し、第3マップ・クラブハウスでも5-3と、あと1ラウンドでチャンピオンシップポイントというところにまで到達していたNiP。Lower Bracket最底辺からの優勝を見事成し遂げるかと思われた彼らは、「Spacestation Gaming」の逆転劇に倒れ、世界一の象徴であるハンマーを掲げることなくMontrealの地を去りました。それが1年と3ヶ月ほど前のこと。今や世界王者となったNiPを語るにおいて欠かせない、辛く悲しいエピソードです。

さて、NiPの歴史は、「Team Liquid」と同じくYear2に遡ります。Year2、3は紛れもなく「PENTA」を中心とするEUの時代でした。Year2 Season1・2 Finals及びSix Invitational 2018を制したのはPENTA。そんなYear2の世界大会において、唯一PENTAを破ったのがSeason3 Finalsにおける「Black Dragons」 ───。

このチームこそが今のNiPです。当時Black Dragonsに属し、今なおNiPで活躍しているのがPsycho、Kamikaze、Julioの3人。Liquidが「Pro League Season7 Finals」でブラジル勢として初の優勝を経験するより前に、Year2以降初めて世界大会でPENTAを打倒したチームとして、彼らは大きく名を上げます。

ですが、Year2を締め括る「Six Invitational 2018」では準決勝で同じPENTAに敗れ、対するPENTAは決勝でも勝利して正真正銘の世界王者となり、Year3の終わりまで世界の頂点に立ちました。

そんな中、NiPに移籍した当ロスターは「Six Major Paris」でベスト8という結果を出すも、Season7、8、9のPro League Finalsへの出場は逃し、pinoを加えた「Six Invitational 2019」や、Muziを迎えて現ロスターで挑んだSix Major Raleighでは1勝もできずにGroup Stage敗退。Season10 Finalsには出場するも、VISAの問題からJulio、Kamikazeが出場できず、ここでも0勝で大会を終えます。

Season10 Finalsに出場したことで枠を得たSix Invitational 2020。NiPはGroup Stageを難無く突破し、Playoffsへ進みます。初戦でTSMにストレートで敗れたNiPでしたが、前年王者「G2 Esports」、NAの強豪「DarkZero Esports」、フランスの新星「BDS Esport」の全てを撃ち破り、Playoffs初日では敵わなかったTSMを今度はストレートで撃破してGrand Finalへ。しかし前述のように惜しくも頂点に届かず、NiPは悔しさを胸にYear5へ突入したのでした。

Year5のNiPは、「Pro League Season11」をLATAM 2位で終え、「August Major」では優勝するも、その後は再び低迷の色が見られます。「November Major」では「Team oNe(現MIBR)」に敗れ3位、「BR6 2020 Finals」でも「Team Liquid」に敗れベスト4、更には直前の「Copa Elite Six 2021」でも再度MIBRに敗れ4位に。勿論Year3、4の低迷期と比較すれば飛躍的に成長していたNiPでしたが、ファンの間では「また世界一に届かないのでは」という不安も広がっていたことでしょう。

さて、最重要な大会である「Six Invitational 2021」、そのGroup Stageにて、NiPはGroup 1位、2位となったTSM、MIBRに敗れ、加えてカナダチームの「Parabellum Esports」に金星を献上するも、何とか3位でUpper Bracketへ進みます。

そして始まったPlayoffs。ここから我々はNiPの真骨頂を目にします。初戦の相手はBDS Esport。昨年はLower Bracket Round3で接戦し、勝利した相手です。そのBDS Esportを相手に、第3マップの延長フルラウンドまで再び大熱戦を繰り広げ、NiPは勝利します。続くFaZe Clan戦、ここでもフルラウンドの延長戦を戦いましたが、2-0のストレートで勝利。更にUpper Bracket FinalのMIBR戦でも、第3マップはフルラウンドの延長戦となりましたが、勝ったのはNiPでした。

つまりNiPは、Playoffsの初戦からUpper Bracket Finalまでの3戦、その全てにおいてフルラウンドの延長戦を経験し、勝利していたのです。加えて、実はそのいずれにおいても先にマッチポイントを握られていました。精神力と言うべきでしょうか、或いは揺るがぬ実力と称すべきでしょうか。彼らの度重なる逆境をも跳ね返す力が、優勝の大きな要因となったことは間違いありません。

Grand FinalでのTeam Liquid戦、NiPはファーストマップを取って王手とするも、その後Team Liquidが2マップを連取しました。Six Invitational 2020では、SSGが第3マップ・クラブハウスにおける2度のクラッチから流れを引き寄せ、続く第4マップ・銀行でも勝利して優勝しました。しかし、このNiP vs Team Liquidの決勝で第3マップを獲得したのはTeam Liquid。 TSM戦以降明らかに勢い付いていたTeam Liquidです。Grand FinalでもTeam Liquid寄りの流れがありましたし、第3マップにおける勝利でそれは最高潮に達していると思われました。

しかしながら、第4マップ・領事館でのNiPはそれを上回る追い風を自ら作り出したのです。Kamikazeの1v2クラッチに始まり、NiPは3度、それも連続でクラッチによってラウンドを獲得。乗りに乗るNESKやPaluhをも抑え、このブラジルの忍者達は遂に純然たる世界王者となりました。

さて、優勝後のインタビューにおいて、Julioは「Psychoは世界最高のIGL※だ」と語っていました。Black Dragons時代からずっとチームを引っ張ってきたPsycho。事実、Six InvitationalにおけるPsychoの活躍には目を見張るものがありました。BR6 2021 Stage1やCopa Elite Six 2021 Stage1でのスタッツと、Six Invitational 2021での彼のスタッツを比べてみましょう。

※IGL・・・In Game Leaderの略。チームの司令塔。

BR6 2021 – Stage1

Copa Elite Six 2021 – Stage1

Six invitational 2021

BR6 Stage1及びCES Stage1ではそれぞれ0.93、0.98と、少なくともRatingの値においてはチームで上から4番目の数字です。しかしSix Invitational 2021では、Ratingは1.10、総キル数もアタッカーMuziと並ぶ188キル、更にオープニングキル/デスの差を見ると44キル27デス(+17)と、あのNESKすら凌いで今大会最高の記録を叩き出しています。pinoとMuziがアタッカー寄りの役職であり、対するPsychoは比較的幅広い役割をこなしていたことを考えると、少なくともチーム内においては彼を最高の選手と呼んでも過言ではない成績です。チームの司令塔として、尚且つ時に応じて様々な役職を担うFlexとして奔走しながらも、R6Sにおける最も大きな世界大会という他の何よりも重要な舞台でこの上ないパフォーマンスが出せる。そんなPsychoは、世界一のチームリーダーと称されるに相応しい選手だと言えます。

ブラジルにとって記念すべき、「Brasil Invitational」とまで呼ばれる大会となったこのSix Invitational 2021で、その中でも一番のチームとなったNinjas in Pyjamas。今大会を始めとして、或いはこのYear6も、彼らの年となるかもしれません。

終わりに

COVID-19の影響により、Rainbow Six EsportsではYear5における3つの世界大会が中止されました。この度めでたく開催されたSix Invitational 2021を見ても、「Wildcard Gaming」や「Virtus. pro」が参加出来なかった点を考えると、未だにその影響を強く受けていることが伝わってきます。

無観客と言えど、パリの地でオフラインの世界大会が開催できたこと、そしてYear5の締め括りとしてSix Invitational 2021が開催されたことの喜びを誰もが噛み締めた12日間。あっという間に終わってしまいましたが、我々は世界大会ならではのマッチアップや展開に心を躍らせ、好きなチームの勝利や敗北に一喜一憂し、それぞれの住む場所で、画面を通して、新たな歴史の立会人となりました。

R6Sは今なお変革を続け、およそ3ヶ月ごとに追加される新要素や改変は、プレイヤーたちにさらなる活気をもたらしています。それに伴い、競技シーンもまだまだ発展していくことでしょう。いつかこのパンデミックが終局を迎え、観客を入れての世界大会が開催されることを願って、コミュニティの皆様には、是非ともRainbow Six Esportsを追いかけ続けていただきたいと思っております。ご精読いただきありがとうございました。

画像引用元:SiegeGG