今年2月に開催された「レインボーシックス シージ(以下、シージ)」の世界大会「Six Invitational 2019」で、2大会連続となる世界ベスト4に進出するなど、国内にとどまらず海外にもその名が轟く野良連合。
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現在、後半戦が開催中の「Pro League Japan Season 10」でも2位(9月25日現在)につけ、11月9・10日に愛知県国際展示場「Aichi Sky Expo」で開催される「レインボーシックスプロリーグ シーズン10 ファイナル(世界大会)」出場にも期待がかかるところ。
今回、取材を9月6日(金)に行い、Papilia(パピリア)選手、Ramu(ラム)選手、Yoshingo(ヨシンゴ)選手にお話を伺ったが、後半開幕戦でロースター変更によりRamu選手が移籍するサプライズがあった。奇しくも「シージ」のチーム移籍から話題はスタートした。
――それぞれ野良連合に加入した経緯を教えてください。
Papilia選手:僕は2018年9月5日(水)にトレードで野良連合に加入したんですが、それまではYoshingoと同じチームにいました。eスポーツ業界はチーム移籍が頻繁にあるんですが、日本は少ないほうなんです。でも世界ではシーズン制のゲームになると、シーズンごとにトップチーム同士で移籍が行われています。早い場合は3カ月で移籍するのも珍しくないですからね。
Ramu選手:僕は2018年10月頭に野良連合に加入しました。ちょうど野良連合がブラジルで開催(2018年11月17日〜18日)された「Pro League Season 9 Finals」に出る直前のタイミングです。
Yoshingo選手:先ほどもお話に出ましたが、もともとPapiliaと同じチームにいて、同じタイミングで野良連合から声をかけていただいたんです。ただ僕は当時のチーム・メンバーで勝ってみたい意志が強かったので、Papiliaが移籍するタイミングでは残ることにしたんです。初めて経験したプロチームだったのもあって、オーナーさんに恩義も感じていたので1年はいようと思ったんですよね。
ただ野良連合のお誘いは、その後も受けていて。前のチームに入って1年経った今年の3月末、元チームメイトのPapiliaもいるし、実際に戦って野良連合の強さも実感してたし、このチームなら世界一を狙えると思って移籍させていただきました。
――頻繁に行われるチーム移籍のメリットはどこにあるのでしょうか?
Papilia選手:チーム補強として、プレイヤースキルを求めて、チームに合う形の人材を交換して試していくのが一つ。もう一つは、ゲーム面だけではなく、その選手がチームに合うかどうか、よりよい形になるようにシャッフルするんです。
――チームとしてではなく、選手として、同じメンバーで長くやりたい気持ちはありませんか?
Papilia選手:昔ながらの日本の雇用形態から考えると、長く同じ場所にいたほうが良いイメージもあると思うんです。ただesportsの世界では長く続けることよりも、結果を出すために変化を続けることが重要なんです。もちろん長く同じメンバーで続けることで得られるメリットも大きいんですけど、ロースター変更によってチームの関係性も含めて改善をして、短い期間で結果が出すことが求められるんです。
――野良連合は国内で珍しいゲーミングハウスでの共同生活を行っていますが、それによるメリットはどういうところにありますか?
Papilia選手:仕事の関係だけではなく、日常生活でも顔を合わせることによって、壁を作らず、分け隔てなく接することが大きなメリットだと思います。チームの親和性や協調性を高めることで、よりチームとしての意識も強くなりますからね。
――他のチームを経験したからこそ分かる、野良連合の強さの理由は?
Ramu選手:個人技の強さはもちろんなんですけど、一人ずつ持っている特色が違っていて、それぞれ長けている部分を持った者が集まっているのが一番じゃないかなって思います。
Yoshingo選手:ゲームの中の特色として、野良連合は攻撃的な作戦を持っています。日本の他のチームは後手に回るような作戦が多いのに対して、野良連合は先手を取っていくことによって相手に何もさせない状況を作りだすのが強さなのかなって思います。
Ramu選手:攻撃的な作戦を実行するには圧倒的なプレイヤースキルが必要なんですよ。
Papilia選手:今日は不在ですがMerieux(メリウス)選手は僕が入る前から野良連合にいて、ロースター変更を何度も経験しているんです。彼はプレーヤースキルがダントツに高くて、同じチームなら誰しも信頼を置ける存在。彼がいるからこそ自信を持ってアグレッシブなプレイもできるし、その意識を全員で共有することで攻撃的な作戦に安定が生まれたのかなと思います。
あと野良連合は日本のチームにはない海外のスタイルを取り入れているんですが、そのためにアナリストさんと呼ばれる情報収集をしてくれる方々が十数名いて、豊富なデータを集めてくれています。
――そのデータは大会前に共有するのでしょうか。
Papilia選手:それもありますが、膨大な量なので大会当日に共有することのほうが多いですね。オーナー兼コーチの貴族さんが試合中も後ろにいるんですが、「シージ」はタイムアウトが取れて、マップの選択にコーチの介入する余地があるんです。そこでアナリストさんが集めてくださったデータに基づいて指示を出してもらうことで、少なからず助けられています。
――今年2月にカナダで開催された世界大会「Six Invitational 2019」ではベスト4進出を果たしました。好成績に繋がった理由はどこにあったんでしょうか。
Papilia選手:正直、大会前は十分な練習はできてなかったんです。
Ramu選手:インフルエンザにかかってしまった選手がいて、練習できない期間が長かったんです。なので練習量は不安でした。
Papilia選手:現地に行って、海外のチームとスクリム(練習試合)をして、そこで集中して仕上げたのが良かったんですよね。
Ramu選手:海外のスクリムは、日本でやるよりも経験値が2倍にも3倍にもなるので、それが大きかったです。
Papilia選手:逆に、5月にミラノで開催された世界大会「Pro League Season 9 Finals」では事前に練習し過ぎたんです。それで初戦で当たった相手に、「こいつらは、このマップが強いぞ」って気付かれてしまい、かなりヤバいマップをやらされてしまいました。
必ず取れたであろうマップも、別のチームから情報が流れちゃったのもあって残念な結果に終わりました。その経験を踏まえて、8月の世界大会「Six Major Raleigh 2019」では無理にスクリムをしなくてもいいんじゃないかという話し合いがあったんですけど……。
Ramu選手:世界大会の経験を積んできたので場慣れはしていたんですけど、いろいろトラブルがあって、それが原因でコミュニケーションエラーが生まれたんです。
Yoshingo選手:「Six Major Raleigh 2019」が僕にとって2回目の世界大会だったんですけど、それほど緊張はなくて、いつも通りの気持ちで臨めたんです。ただMerieux選手が体調不良で急遽、貴族さんが入ることになって。そういうトラブルに対応できずに、良い結果を残せませんでした。
――「Pro League Japan Season 10」は前半戦2位で折り返しましたが、振り返ってみていかがですか?
Papilia選手:前半戦は惨憺たる結果でしたね。ファインプレーを許す局面が多くて、もちろん相手が強いのもあるんですけど、それを生む要因を作っているのは自分たちのミス。なので反省点が多かったですし、それが後半戦に響かないように気を引締めていきたいです。
――そうしたミスの大きな原因はどこにあると思いますか?
Papilia選手:チーム全体で今まで感じたことのないプレッシャーがあったんです。
Ramu選手:海外大会で結果を残したことで、野良連合は勝って当たり前みたいな重圧を感じたんですよね。特にYoshingoは野良連合に入ったばかりだったので、より重圧を感じたと思います。
Papilia選手:どうしても入れ替わったメンバーと比べられますからね。
Yoshingo選手:自分では意識してないつもりでも、野良連合で圧倒的な実力を誇ったウォッカ選手の後釜で入ったので、それなりにプレッシャーはあったと思います。ただ、この2人も世界大会でベスト4に入ったことによる重圧も大きかったでしょうしね。
――最後に後半戦に向けて意気込みを聞かせてください。
Papilia選手:11月のプロリーグFinalsの開催地が日本で、アジアでの開催は初になります。主催国の代表として絶対に出たいですし、その舞台で勝利を収めたい。そのためには1試合1試合を大切にして、結果を積み重ねていきたいです。
取材・文:猪口貴裕