人気格闘ゲーム「ストリートファイターV」を使用して行われるプロツアー「Capcom Pro Tour 2019(CPT)」にて、「EVO」を含む主要大会で4連覇を果たすなど輝かしい成績を残した、ボンちゃん選手。

Red Bull Athletes(レッドブルアスリート)として、プロゲーマーの第一線で活躍するボンちゃん選手に2019年度の振り返りから、2020年にかけての展望など競技シーンに纏わる話を伺うことができました。

さらに、今回インタビューをesportsメディア「ESPORTS侍NEWS」と合同で行いました。後編では、ボンちゃん選手のプロゲーマーとしての素顔に迫る話を聞くことができましたので、ぜひ併せてご覧ください。

――CPT2019お疲れ様でした。全体を通していかがでしたか。

ボンちゃん選手:結果だけを振り返ってみると頑張ったんじゃないかなって印象ではあるんですけど、やっぱり終わった段階だと後半の方があまり勝てなかったので、今年やっぱり勝ててないなって感覚が自分の中ではあるんですよね。ただ振り返って成績を見たときに、結構勝ってるなって印象なので総括でいうなら合格点はあげてもいいんじゃないかなって思いますね。

――今年度なにか目標は掲げていたのでしょうか。

ボンちゃん選手:やっぱり「EVO」と「Capcom Cup」は、毎年開かれてる大会の中では大きい2つなので、そのどちらも優勝の経験がなかったので目標として掲げていました。その内の一つをクリアすることができたので、頑張ったのかなと思いますね。

――(クリアできた一つとは)「EVO 2019」の優勝ですよね。やはり、そこに向けて特別な練習はしていたのでしょうか。

ボンちゃん選手:いやそんなことはないですかね。CPTはシーズンが始まると、3月から12月までずっと大会があるわけじゃないですか。3月までに練習をして、大会で勝てる内容を自分で作って、あとは披露していくだけなんですよ。

なので「EVO」だけに特化した練習はしてないですね。「EVO」で大体この人と当たるだろうっていう予想があって、そこに対して少し対策はしたりしますけど、「EVO」を優勝するために練習したかと言われると、そうではないですね。結果として優勝が付いてきたっていう感覚ですね。

――いつも通りのプレイをしただけだと。

ボンちゃん選手:ですね。ただ、「EVO」でTOP8に入ったときの気合の入り方だったり、TOP8に残った時の喜びっていうのは凄かったですね。優勝する前日の話なんですけど、TOP8に入った時の嬉しさは最近無かった感覚で、軽くこみ上げてくるものがありましたね。本当にTOP8に残りたいと思ってて、残ったからには絶対に優勝しようと思ってたので、結果が出てよかったなって思いましたね。

――CPT2019を通しても、かなり思い入れの深い大会になったんですね。

ボンちゃん選手:そうですね。準優勝はしたことがあったんですけど、優勝はなかったですし、もう二度と優勝できるチャンスはないんじゃないかなと思ってました。そこで勝つことができたので素直に嬉しかったですね。

――決勝大会「Capcom Cup 2019」を振り返ってみて。

ボンちゃん選手:初戦の相手は決まっていますし、2戦目の相手も予想することができるので、そこの練習に対してはちゃんとやれたと思うんです。ただ、TOP8に残るまでの練習はちゃんとできてるんですけど、それ以降の対戦相手は全然変わってくるので、出たとこ勝負だなって感覚が強くて、全体的に練習量が足りなかったなっていう感覚が凄くあります。

初戦と2戦目の練習に時間がかかりすぎちゃって余裕がなかったですね。それくらい気合は入れていたんですけど、初戦で負けて「これはきついぞ」ってなってしまいましたし、心の弱さというか、落ちたときの落胆が凄かったですね。

本当は32人しかいない大会なので、ルーザーズに落ちても全然チャンスはあるわけですよ。ただやっぱり試合数が1.5倍くらい増えてしまいますし、それはショックでしたね。頭では分かっていても引っ張ってしまったなって感じですね。

――やはり試合中に切り替えることができなかったのが敗因といえるのでしょうか。

ボンちゃん選手:そうだと思います。キャラに対しては納得のいく負け方でしたし、「この負け方してしまうならしょうがない」って思えるところまで練習はしていたので、結果的には負け負けで25位にはなってしまいましたが、いつもと変わらない取り組み自体はできていたので、成績が振るわなかったなくらいの感覚でしたね。

――「Capcom Cup 2019」で優勝した、アメリカのidom選手が使用人口が少ないキャラ(ララ・ポイズン)を使用していたことが印象深かったのですが、そこに対しては選手目線でどう感じましたか。

ボンちゃん選手:idom選手が勝てた理由として、レアなキャラであったというのも一つあるんですけど、あのキャラクターであそこまでのクオリティを出してるプレイヤーがいないんですよね。レアなのもありますけど、自分が想像してる「ララ」と違うと対峙したプレイヤーは思ってて、こんな連係があるんだとか、こんな負け方してしまうんだ、全員がこれだけ押さえておけば負けないで済むっていう戦略を構築してるんですよ。

idom戦に関していうと、「こんな負け方があるんだ」っていうのを試合中で感じて面を食らって、それを修正できなかったっていうのは、みんなあったのかもしれないですね。ただレアキャラってことは、やっぱりキャラの強さが足りてないってことなので、あそこまで練度を高めたidom選手は素晴らしいの一言ですね。

――例年ではCPT中にキャラ調整が入っていましたが、今年は大きな調整がありませんでした。ツアーを回る中で、今回のように調整が入らなかったことに対してどう思われましたか。

ボンちゃん選手:これに関しては、自分の使用キャラが強い選手は良かったと思いますし、逆に弱いキャラを使ってた人は「おいおいおい話が違うよ」って感じだったんじゃないですかね。ただ皆、途中でキャラ調整が入るものだと思って取り組んでいますし、それこそ今は弱いけど調整してくれるだろうから、このままのキャラでやっていこうって考えていたプレイヤーもいたと思いますね。

僕はたまたま強いキャラ(かりん)を貰えていたので入らなかったのは自分にとってプラスでしたし、入ったら入ったで上手くやろうと思ってるのは例年のことなので、そういった意味では僕は結構ラッキーだったのではないかなと思いますね。

――ちなみにボンちゃん選手がキャラを選ぶときの基準はなんでしょうか。
ボンちゃん選手:僕が一番長くプレイしたゲームが「ストリートファイターⅣ」なんですよ。そこで使っていたのが「サガット」というキャラで、相手をコントロールするのが得意なキャラなので、自分が動くよりは相手を動かせるキャラを好んでいますね。

「ストリートファイターV」のシーズン1では、一番最初「リュウ」を使っていたんですが、選んだ理由としては当時「Red Bull Kumite」の初大会があって、そこで結果を出さなければならないと考えたときに、真っ先に動かせそうだと思ったのが「リュウ」だったんですよね。

終わった後に「ナッシュ」に変えたんですけど、大会中に「ストリートファイターV」シーズン1を見ていたときに、「ナッシュ」なら自分のやりたいプレイができるなと思って変えましたね。基本的には相手をコントロールしたい派ですね(笑)。

――大会で活躍したキャラクターが下方修正されることがよくありますが、そこに対してはどう思っていますか。

ボンちゃん選手:やっぱり、自分ではプレイせずに動画や大会を見て楽しむ人もいるわけじゃないですか。大会を観てて、毎回活躍してるキャラが同じだと絶対面白くないと思うんですよ。そういったことを考えるだけでも色々なキャラが活躍するべきだと思いますし、今までフォーカスが当たってなかったキャラが活躍してほしいと僕自身も思います。

ちょっと行き過ぎた強さを持ったキャラがいてもいいと思っている方なので、今まで活躍したキャラが弱くなったとしても他のキャラに変更してもいいと考えていますね。強いキャラは弱くなるべきだと思いますし、弱いキャラは強くなるべきだとは思っています。

――キャラ調整で、自身としては何か影響はありましたか。

ボンちゃん選手:まだ(キャラ調整が入って)1週間なので試行錯誤中ですけど、僕が使ってる3キャラ(かりん、サガット、ナッシュ)の中では、「ナッシュ」が一番いけるんじゃないかなと第1印象では思いましたね。ただ練習してると、やっぱりサガットかなって思ったりしてますね。

現状キャラの強さはまだ正確に測らなくていい時期だと思っていて、ぼんやりと大会で勝てそうだなだったりを考えるだけで充分なんですよね。

今の印象としては「ナッシュ使おう」っていうのはあるんですが、また年が変わったら「サガット」「かりん」を使っているかもしれませんし、「かりん」が弱体化したんですけど、思ったより戦えるんですよ。何を選んでもいいって状況になっているので、悩ましいところです。ただ久々に「ナッシュ」で戦ってみたいなって気持ちもありますね。

――今までと全く違うキャラを使うってことはないのでしょうか。

ボンちゃん選手:いや実は「春麗」にかなり傾いているところはありますね。調整表を見たときに最初に面白いと思ったのが「春麗」で、今一番面白いキャラクターであると確信を持っていますし、キャラの強さでもTOP5には入るのではないかなと思っていますね。ただ難しいキャラクターなので、(来年3月までに)間に合うのかなっていうのが不安な点でもありますね。

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