大盛況に終わった「プロリーグ シーズン10ファイナル in Japan」。『レインボーシックス シージ』では日本で初めて開催する世界大会とあって、4000席のチケットは即完売。会場の規模も熱気も過去最大級の大会となりました。
そんな歴史に残る大会を、公式キャスターとして実況・解説を務めるふり〜ださん、ともぞうさんとともに振り返ります。
アジア代表のAerowolfが大躍進を遂げた要因、そして全シージファンが圧巻されたneLo選手のあのスーパークラッチまで。私たちが熱狂できた要因を、深く解説していただきました。
想像をはるかに超えた盛り上がり
ーー初めての日本での大会、印象はいかがでしたか。
ふり〜だ:正直大会前は、今回は盛り上がりに欠けてしまうんじゃないかとネガティブな気持ちがありました。シーズン10はどの地域も“波乱のシーズン”で、世界大会初出場のチームも多く集まりました。残念ながら日本のチームもAPAC予選で敗退してしまいましたし、8月のSix Majorのベスト4でさえ誰もいない状態で。
ともぞう:G2やTeam Empireもファイナルの場にいないですからね。
ふり〜だ:僕らもシージの興行に携わる人間として、日本で開催するからには「みんなの好きな選手たちが来てくれること」も大事な要素だと考えていました。なので、このファイナルに集結する8チームのことを日本のファンは知ってるのかなと……。
ともぞう:こればかりは本当に不安でしたね。だから大会前は「僕らがお客さんを煽れるだけ煽ろう!」と意気込んでいました。ただ、僕らがそれをやる前に、会場の4000人が自然と盛り上がってくれて。
ふり〜だ:あれは日本のシージコミュニティの結束力みたいなものが感じられましたね。選手たちの素晴らしいプレイひとつひとつに、観客の方が自然と立ち上がって、もうスタンディングオベーションですよ。想定以上の反応で、シージ4年目で僕が見てきたイベントでも「これだけみんながシージを真摯に愛してくれているんだ」と感じられるものでした。
ともぞう:一体感がありましたね。特にNatus Vincere(以下、NaVi)の選手が優勝トロフィーを掲げるシーンがあったじゃないですか。あれが象徴的で、完全に選手もノってました。
ふり〜だ:NaViは1日目から会場を味方につけていましたね。彼らはプレイでも魅せつつ、さらに自ら会場を煽ることで、自分たちが勝てば会場全体が気持ちよくなってしまっている構図を作り上げたんです。もはや言語ではないコミュニケーションがそこにはあって。
ともぞう:優勝トロフィーを持ち上げるときに、自ら「う〜〜」と煽るなんて、他の世界大会で1回も見たことないですからね。みんな総立ちで声を揃えていて、演出に紙吹雪まで。あんなにわかりやすくて、良い絵面はないです!
ふり〜だ:選手たちはもちろんですが、海外キャスターの方々もとても嬉しがっていましたよね。特にどの地域のチームにも同じように熱を注いで応援しているのが印象的だったようです。
以前南米で開催したときは、もちろん自国のチームへの応援はすごかったんですが、反対に他の地域と対戦するときのブーイングも大きくて。盛り上がるのは良いことですけど、理想を言うなら、みんなを応援してほしいじゃないですか。それが日本だと実現していた。だから世界中でいろいろな大会を見てきた中でも「日本人が一番だ」って言ってましたね。
ともぞう:会場の反応によってイベントのクオリティも格段に高くなりましたし、みんなで作り上げたイベントになりましたね。
「スタッフも機材もすべて海外から」
ともぞう:観客もそうですが、これだけ盛大な大会を作り出せたのはESLのおかげだと思います。
今回、演出面においてはESLが主導となっていました。ゲームシステムもステージショーも、演出で使う機材も、すべて海外から持ってきたと聞きました。もちろん大会ディレクターも裏で機材を動かす人も、みんなSix MajorやSix Invitationalで経験のある海外の方です。
ですから、例えば会場のモニターに映し出されるオペレーターやガジェットの情報も、僕らが実際に海外で見たものと同じように再現されていました。本当にSix MajorやSix Invitationalと比べても何の遜色もないくらい質の高いエンターテインメントショーで、唯一大きく変わったのは、そこに日本語が加わったことくらいですかね。
ふり〜だ:今大会では開催国向けのホスピタリティとして、会場内の音声やモニターに映し出す情報をできるだけ日本語で表示していたんです。そのために、前日のリハーサル後に急遽日本語の監修もお手伝いしました。日本人の目線でスライドの表記を直したり、中国語フォントになっている漢字を直すために文字のフォントを変えたりとか。
ふり〜だ:結局前日は、僕らキャスター陣のリハーサルが20時くらいに終わってから、24時くらいまで一緒に準備をしてましたね。大変だったんですけど、その時間からフォントを変えるって彼らの負担がものすごく大きいんですよ。それでもESLのみんなが真摯に開催国(日本)のことを思って動いてくれて、僕はその姿勢に心を打たれましたね。
ーーESLにとって、オフライン大会で日本語を使用するのは初めてだったんですね。
ふり〜だ:そうですね。音声の面でも、グローバル向けに英語で配信をしながら、会場では日本の観客向けに日本語の音声を流すので、その切り替えが難しかったはずです。特に、総合司会のMattによる試合後の選手インタビューやアナリスト席からの解説のように、どうしても英語でしか届けられない部分と、僕ら日本の実況・解説席との切り替え。
連携を取りたくても、カウントダウンを出せないとか。会場の音声は僕らがまだ話しているのに、インタビューが始まってMattの出だしの音声が入っていないとか。初めてなので、どうしても避けられなかったトラブルもありましたね。
ともぞう:音声や言語など課題もありましたが、本当にESLのショーに対するこだわりが、今の日本では真似できないほどの大会を作ってくれました。あの会場に来れたファンのみなさんは、本当に貴重な経験をしたと思います。
ふり〜だ:魅せ方に関しては、さすがESLでしたね。
ベストマッチは、Giants対Aerowolf!
ーーでは今大会のベストマッチを伺いたいのですが、ここはやはり……?
ふり〜だ:ベストはね、やっぱりGiants Gaming(以下、Giants)とAerowolfの試合ですね。
ともぞう:もうあれ以外ないくらい、ここ数年で指折りの好ゲームでしたから。こんなにおもしろくなるのかと、びっくりしました。
ふり〜だ:Giantsが勝つと踏んでいた人も多かったですからね。
ーー撃ち合いのシーンも多く、シーソーゲームでしたよね。あの試合のポイントは何だったのでしょうか?
ふり〜だ:Aerowolfが機能していたベースの部分として、とことん殲滅を狙って動いていたことが大きいです。アジアのチームって、プラントor殲滅だとプラントに寄る傾向が強いのですが、Aerowolfは殲滅寄りなので、よりドローンでの索敵やプレイヤー同士の距離間に気を配っているんですよ。
なので、Giants側の目線だと遊撃に出たところを囲まれてしまうとか、相手のペースに乗せられて撃ち合いに出てしまう場面が多く見られましたね。Giantsも決して撃ち合いのレベルが低いわけではないのですが、Aerowolfのカバースピードはアジア随一なので、結果として同じ土俵でバチバチに撃ち合うという。Giantsも、こんなに殲滅を狙ってくるなんて予想外だったと思いますよ。
ともぞう:シージの一番おもしろいところで、本当にそれぞれのチームの良いところ同士が頂点でぶつかった試合でしたね。
ふり〜だ:逆にAerowolfの準決勝では、DarkZero Esportsがあっけなく勝ったじゃないですか。あれは戦術面の相性で、DarkZeroは良い意味で相手をさらりとかわすんですよ。往なすのはお手の物、という感じで。
ともぞう:いや本当に、往なしてましたね〜。
ーー“どちらの土俵で戦うのか”が顕著な2試合ですね。
ふり〜だ:そうなんです。観ている側からすると、Giants戦のように撃ち合いでカバーが続く試合は派手ですし、見応えがありますよね。