2019年12月、Call of Duty部門の復活を電撃発表したプロゲーミングチームSCARZ(スカーズ)。

SCARZのCall of Duty部門は、まだ国内のプロシーンがなかった2015年に日本で初めてのCall of Dutyプロチームとして活動を開始。いわばCoD界においては「先駆者」であり、当時の「絶対王者」でもありました。

そんな同チームは2018年『CoD:WWⅡ』シーズン終了後に解散を発表。約1年間の休止期間を経て、メンバーを新たに満を辞して復活。

なぜ今チームを復活させたのか。この1年間何を思いSCARZを運営していたのか。今だから聞きたいことを、SCARZのオーナーであり株式会社XENOZ代表取締役の友利洋一氏にインタビューしました。

“頂点”への執念

――CoD部門についてのお話から伺います。最近CoDシーンのファンになった方の中には昔のSCARZのことを知らない方もいると思うので、まずは簡単にこれまでのチームのことを伺えますか?

友利氏(以下、敬称略):SCARZがプロチームになったのが2015年のことです。『CoD:AW』の時代から活動していて、手前味噌ですが大会に出れば優勝ばかり。実際に試合を見て、彼らなら勝てると確信したので自信もありました。

そこからRushさんが参戦してきて、『CoD:IW』ではライバルチームのような良い勝負をする関係になり、2018年の『CoD:WWⅡ』から国内では正式なプロリーグが始まりました。

プロリーグが開幕した時には、初期メンバーから選手が大きく変わっていたこともあり、そこまで良い成績は残せませんでした。ですが僕としては「SCARZのCoDは頂点にいてほしい」と強く思っていたので、プロリーグ後に解散を発表しながらもシーンに戻ってくる気は満々でした。

――日本一への思いがずっとあったんですね。ではなぜ今、CoDのチームを復活させたのでしょうか?

友利:なぜ今かというと、他でもなくありがたい縁があって今のメンバーと出会えたことが大きいです。彼らとならまた日本一を目指せると思えたからですね。ただ、個人的にCoDはずっと大好きなゲームなので、理由の一つとして単純に今作『CoD:MW』の期待値が高かったこともあります。

SCARZは選手が夢を叶える場所

――実際にチームの再編を現実的に検討し始めたのは、いつ頃からでしたか?

友利:きっかけは2019年9月の東京ゲームショウです。実はそれまではあまり乗り気ではなかったです。

今年度は海外のプロリーグが『オーバーウォッチ』と同じようにフランチャイズ化されると発表されました。つまり、今後はどれだけ上手くなっても何十億も払って参加枠を買わないと世界の頂点にはいけなくなってしまったのです。

海外チームオーナーのCEOと話した際にどうするのか尋ねてみたところ、彼らは「やらない、あまりにも高すぎるから」と。ブランディングの観点で言えば海外のビッグチームはあれだけのお金を出して参戦する意味はないですし、日本の僕らに至っては手も足も出せないままプロへの入り口を閉ざされたような感覚でした。

――世界のプロシーンへの望みが絶たれた中で、どうして国内でチームを作られたのですか?

友利:確かに日本から世界へ選手たちを送りたい気持ちはありますが、あくまでもチームは日本のマーケットで運営するわけです。なので、日本の方々に見てもらって、そこで人気が出せるなら僕たちがやる意味は十分にあると思いました。

それこそ「SCARZが日本で一番強い」と再びシーンを沸かせることができれば、強さが魅力に繋がって、外から興味を持つ人も増えるかもしれません。

それに、各選手が夢を持っています。もし選手個人が、例えばFaZe CLANやOpTic Gamingのようなビックチームに行きたいといった夢があるなら、絶対に行くべきだし、その夢を叶えるまでの過程でSCARZを利用してくれてもいい。

僕も10年以上前にゲームのプロを目指していました。当時の僕はその夢を叶えられませんでしたが、だからこそ今の若い子にゲームで夢を叶えてほしくて立ち上げたのがSCARZというチームです。

なので、2020年1月には世界大会(オープン大会)にも行きますし、向こうに慣れてほしいから海外でのブートキャンプもする予定です。チームも選手もお互いがWin-Winの関係で目指すために、そうしたこともどんどん挑戦していくつもりです。

勿論、将来的には現時点で大きな海外チームに匹敵するチームになるのが目標です。

参戦障壁の高い世界戦、それでも目指したい理由

――世界大会はとても気になっていた話題です。オープン大会に自費で参戦するのは莫大な費用もかかるはずですが、そこまでして世界へ挑戦する理由はなぜでしょう?

友利:国内で優勝を続けていた初期の頃から、選手たちはもっと強い相手と戦いたくて世界に行きたがっていました。ですが、行けなかった。当時は日本からオープン大会に出る資格がなかったのです。

僕も申し訳なさとやりきれない気持ちがあって、運営さんに何度も「世界大会に出たい」と相談をして、それでもダメで、選手も僕もものすごく悔しい思いをしました。出たいのに出られなかった期間が長かった分、僕らは世界への思いを人一倍強く持っているのです。

ただ今は仕組みも変わって出られるようになりました。挑戦できるのにしない手はありません。

ですから、やるしかないと思っていますし、選手も死ぬほど練習も頑張っています。彼ら自身も「結果が出なかったら世界に行っても……」という気持ちを少なからず感じていると思います。あとは頑張って結果をもぎ取るしかないです。

今回新チームにコーチとして加入してくれたねこかんも、当時まだ世界への道がなかった頃にSCARZの選手として一緒にやっていた仲間です。彼は一度eスポーツシーンからは離れていましたが、またSCARZに戻ってきてくれました。みんないろいろな思いを持って集まってきたのが今の新チームです。

――熱い……! ちなみに、CoDのシーンから離れていた昨シーズンの1年間、友利さんの目線からシーンのことをどう見ていましたか?

友利:プロリーグが『CoD:WWⅡ』の1年間だけで終わってしまったことは、勿体無いなと思いました。リーグとして効果を出すなら、やはり1年では足りないだろうなと。

ただ、東京ゲームショウなどを見ていると、あれだけ盛り上がる大きなステージイベントができるのはやはりCoDだなと思ってしまいます。ちゃんとファンがいてそこで選手も頑張っていて、「観る」と「やる」の役割が形になりつつあるのが今のCoDだと思います。

それから、昨シーズンはLibalentさんがすごく強かったですよね。今シーズンもとても強いです。その強さを手に入れるためには相当な努力があることを理解しています。SCARZとしては、CoDシーンを盛り上げるためも含めて強いチームと良い勝負をしたいと心がけています。新たな風を吹かせることが更なる発展に繋がると信じていますから。

オーストラリアの選手から学んだ“プロとしての在り方”

――話題を移しますが、昨シーズンはオーストラリア拠点のCoDチームを運営していましたよね?

友利:はい。今はFA期間で、今後チームを継続するかどうかは検討中です。海外でeスポーツをやるには明確なビジョンがないと意味がないですし、僕たちが求めることと彼らができることが合致しているかどうかはじっくり考えている最中です。

――当初チームをスタートした際のビジョンはどういうものだったんですか?

友利:いろいろありますが、僕らが海外選手のマインドを知りたかったのが大きいです。

――マインド?

友利:2018年に海外のオープン大会に出た際に、日本と海外との温度差に驚愕しました。世界大会ってすごいんですよ。選手たちの雰囲気も違いますし余裕で煽ってくる。その差に直面して、海外の選手たちはどういうことを考えているのか、チームを運営する僕らが彼らを攻略しなければと思ったのです。

それなら「どうなの?」と彼らに聞くよりも、一緒にチームをやって毎日話すほうが効果的で早いのではと考えて、SCARZの海外チームが始動しました。

――非常に合理的ですね。実際に彼らと対峙してみてどうでしたか?

友利:彼らはまだ18歳19歳なのに考え方が大人で、全員が素晴らしい人物でしたね。

チームに加入する前から日本人とは違うなと感じました。おそらく今の日本で選手を公募すると、応募時の情報は名前とTwitterと志望動機くらいです。ただオーストラリアの選手たちは、そこに自己プレゼンまで加えて送ってくれたのです。

企画書のような資料に、個人のプロフィールや経歴、得意武器、配信チャンネルの登録者数、さらにチームに提供できる価値まで。「僕らが加入することでチームにこういうメリットがあるよ」と対価を考えて伝えられるって本当にすごいことです。この部分だけ見たら、もはやビジネスですから。

実際に一緒にやるようになってからも、ホテルや飛行機も全て自分たちで手配して、様々な交渉も自分たちでやってしまう。とても自立していました。

――直に触れ合って初めてわかることですね。

友利:まさにそうです。FNATICのレインボーシックスシージのチームも、自分たちで交渉して日本に来ていたので、おそらくそういう感じかと思います。チームに任せっきりにしない、環境のせいにしないのが、彼らが成長できている要因なんだと感じましたね。

SCARZは世界的に展開していて、選手も世界を目指しています。将来的には選手が海外チームに行くのが当たり前になる時代も来るかもしれません。いざそうなったときに、困るのは選手です。事前情報もアドバイスもなく海外に出て、向こうでカルチャーショックを受けて、それが選手活動の足かせになってしまう。

今僕らが海外の選手からマインドを吸収して日本の選手たちに教えてあげることで、日本での選手たちの活動も変わるかもしれませんし、人として素晴らしい成長をするかもしれません。海外の選手たちと年齢もちょうど同じくらいですから、リスペクトして学べることは多いと思います。

――何をするにも、やはり人間性は大切ですよね。

友利:大事です。どんなに実力のあるプレイヤーがいても、人間性がしっかりしていないと長くは続かないですから。

日本でも、CoDではそういうマインドを持っている選手が比較的多いような気がします。いろいろなゲームのコミュニティを見ていますが、CoDはみんな気持ちいいくらい真っ直ぐなので。

ただ選手も大事ですが、同価値でマネージャーやコーチの人間性も大事にしています。選手たちはチームの上の人をよく見ていますから、発言と行動が理に適っているかどうかで信頼度も変わります。そういう意味で、チーム全体として人間性はとても大事にしています。マネージャーやコーチ陣と選手、それに僕たちと、相互に良いところを学んで成長できることが理想的ですね。

ゲームの競技シーンを文化に

――では最後に今後のチームのことを。これから注力したいタイトル、また可能性を感じているゲームタイトルはありますか?

友利:もちろんCoDです。あとCoDモバイルもです。モバイルはまだシーンが固まっていないので様子を見ている段階です。

可能性があるのはAPEXですね。2020年にカスタムサーバーができればもっと盛り上がると思いますし、これから波が来るのではと見込んでいます。

――楽しみです。ちなみに来年2020年のeスポーツがどうなっていくか、友利さんの想定っていかがですか?

友利:どうでしょうね、2020年の東京オリンピックに合わせて様々なイベントが行われると思うので、そこでどのくらいeスポーツが関わってくるのかは注目しているところです。

個人的にはFPSが大好きなので、こういうところにFPSゲームが入ってきて欲しいです。表現の問題はあるかもしれないですが、血が出ないようになど対策もされているので、もっとゲーム性を尊重してもらえたら嬉しいですね。

ただ正直eスポーツは“明日のみぞ知る”みたいな側面もあるので、来年以降どうなるかはわからないですが、僕たちはeスポーツがただのブームではなくて文化として存在するものにしていくために頑張るだけです。

今参入している企業さんたちも「一緒に盛り上げたい」と思ってやっているので、スポンサー企業さんとも長い目で一緒にやりつつ、大会運営やゲーム側とも連携を取って、みんなで一丸となってシーンを活性化させていきたいです。

――ありがとうございました。今後に期待しています!

2020年1月には、SCARZ CoD部門選手&コーチへのインタビューも予定しています!公開をお待ちください!

チーム公式サイト:SCARZ